レーザーの高度利用と微小粒子生成メカニズムの解明で地球のエネルギーと環境を守る。

環境安全工学科 秋濱 一弘

レーザーの高度利用と微小粒子生成メカニズムの解明で地球のエネルギーと環境を守る。

環境安全工学科 秋濱 一弘

エンジンの中でレーザー誘雷?未来の点火技術

ガソリンエンジンの点火方式は、エンジンが発明されて以来100年もの間、スパークプラグ放電による点火、すなわち放電距離が1ミリメートル程度の「点状」の点火が用いられています。しかしもっと広い範囲で点火できれば燃焼効率は飛躍的に向上するため、放電距離を伸ばしたいのです。そこで、レーザー誘雷のように、まず電極間にレーザーを集光してプラズマを発生させ、そこに高電圧を印加する方法を考案しました。この方法によって放電距離は10倍以上となり、画期的に距離が伸びました。エンジンの中で上から下へ雷を落とすようなイメージで長い放電を作り、一気に点火する「未来の点火技術」の開発を目指しています。

大気汚染と戦う!粒子生成メカニズム解明とモデリング

最近大気汚染は深刻さを増しています。要因の一つがPM2.5、粒径2.5μm(2.5mmの千分の1)以下の粒子状物質です。大陸の大気汚染によって日本のPM2.5濃度が上昇し、健康に影響を及ぼすのではないかと心配されています。この微小粒子の発生源の一つは燃焼を起源とする「すす」です。ところが燃焼による微小粒子の生成メカニズムは未だ不明な点が多いのです。たとえば都市ガスのような気体燃料が燃えても固体のすすは生成しますが、これは気相から固相への相変化を伴う複雑な化学反応です。現在、化学反応計算や特別な反応装置を用いて、すす粒子生成のメカニズム解明に挑戦しています。また、すすの出ないクリーン燃焼コンセプトも研究しています。

触らずに状態を知る魔法の技術!レーザー分光技術

触らずに温度や組成など、その場の状態を測ることは想像以上に難しい。例えば温度を測るため温度計を挿入すれば、温度計自体が測定場を乱してしまうからです。このことを解決する強力な味方がレーザーです。高出力、混じり気のない色(単色光)や直進性などレーザーの優れた性質を駆使すれば、見たい原子・分子だけを興奮させ、その後に発する光を分析することで、温度や濃度の情報を得ることができます。いわゆる「レーザー分光技術」です。この技術は温度計のようなプローブが差し込めないエンジン内の燃焼診断にも活用されており、科学技術を支える基盤技術として進化し続けています。

ここで紹介した研究を行うには、機械、電気、化学工学など複数分野の高度な知識が必要です。さらに、それらを単独ではなく、互いに融合させることで研究の新たな方向性を示し続けることができます。また研究を継続的に遂行するには、研究費などの経営面のマネージメント力も重要です。すなわち研究活動は生産工学の縮図と考えられます。「ものづくり」では全体を俯瞰することができる「経営が分かる技術者」が求められており、研究者と何ら変わりません。環境安全工学科の特徴である「幅広い工学分野を融合した総合知識」を武器に、生産工学の本質を極めるとともに、グローバルな研究を通じて地球のエネルギーと環境問題に挑戦しましょう!

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