ただ知識を学ぶだけでなく、それを社会に出てからちゃんと役立てる人間を育てたい。つまり、人間力を高めることが「Entre-to-Be」の目的です。 今、残念ながら受け身の学生が多いのが事実です。それは、素直で、よく話を聞き、学ぶ力が高いといえるのですが、自分から考えたり、行動したり、チームワークに弱いという反面も。大切なのは“attitude”。人に物事に向き合う姿勢を鍛えることです。これは、将来、経営者やリーダーとして企業を引っ張るうえで大切な、信頼を得るために必要なことだと考えています。日本の先端事例の企業から講師を招いての授業では、プロの思考スピードの速さ、やる気の高さに圧倒されるでしょう。

でも、学生たちには説得力のある大きなエールになります。また、違う学科の学生がグループ作業をする“学科横断プロジェクト”では、普段授業で使う言語から異なるメンバーが集まることで、自分の思いを伝えること、他人の意見を聞くこと、それらをまとめることの難しさに直面します。北野さんもだいぶ苦労したみたいですが、でも、その壁を乗り越えたことで自信と力が身についたはずです。それが、 社会に出てからのコミュニケーションで生かされるのです。学生たちには、まだそんな実感は少なく、厳しさ、辛さ、大変さを感じることのほうが多いでしょう。それもまた、大切な学びです。社会を生きていくうえで、いろいろな場面で人の助けが必要なことに今から気づいてほしい。専門分野の学びはもちろん、多様な対応力も身につけて、これからの日本を支える人材に育ってほしいです。

※記載されている学年は取材当時のものです。

正直言って、入学はしたものの何をやりたいか、はっきりしていませんでした。そんな自分に刺激を与えたくて「Entre-to-Be」に参加を決めました。1年生のときは自分から何かするのでなく、ただ聞いて、学んでという感じ。2年生になると、違う学科の仲間と3人でグループを組み、事業計画をするのですが、それぞれが主張を曲げないのでテーマを決めるだけで何時間もかかり、リーダーとしてまとめる大変さをイヤというほど実感しました。もちろん、得たものも大きかったです。それは、3人が違いを認め合って知識やスキルを共有したら3倍の世界が広がることに気づけたこと。

連想ゲームのように話し合っていく中で、次々と新しいアイデアが出てくる気持ちよさも味わえました。「Entre-to-Be」の授業は土曜日にありますが、休もうと思ったことは一度もなかったです。夏休み中も集まって課題をこなしました。やればやるだけ自分たちのチカラになる。そんな実感もうれしかったですね。今は、ビジネスプランコンテストの準備に追われています。中小企業診断士など、プロによる適格なアドバイスを受け、先生方からも時間を問わずきめ細かなサポートをしてもらい、目指すは入賞。グループの士気も上がっています。こういう経験は、たとえ自分で起業はしなくても、インターンや進路を決めるうえできっと生きてくると思う。今はやりたいことがいろいろ出てきました。「Entre-to-Be」は自分と向き合う時間でもあると思います。何をやりたいか、何が向いているか、知らなかった自分をここで見つけた気がします。