RESEARCH

学術フロンティア・リサーチ・センター研究プロジェクト

平成15年度文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業(学術フロンティア)採択

「地球環境調和型新技術開発を目的とする水の高度利用に関する研究」

基礎研究グループ

高圧水の反応と相平衡に関する研究

水および水溶液の広範囲な温度、圧力における物理的・化学的性質を明確にするためにその基礎データを収集します。高温高圧水の反応では、有機化合物、無機化合物との多様な反応性についての知見を得て、建築資材、道路舗装の分解・再利用に応用されます。また、天然ガス成分、二酸化炭素と水が反応して生成するガスハイドレートの実験的、理論的研究は、現在人類が抱える地球温暖化やエネルギー問題を解決する上で、重要な研究テーマです

高圧水を利用した分離プロセスの開発

地球上に存在する水の約97%を占める海水から、地上生物の生命の源である淡水を海水から確保する技術の確立を目的としています。さらに、高温海水に対する耐圧性、分離能の優れた逆浸透膜の開発を行います。

高圧水利用技術の無機化合物の機能化への応用

ナノメートル精度で制御された次世代の機能性材料を開発する際に必要となるナノテクノロジーは、物質を構成している化合物(結晶)ができる過程の「自己組織化」または「原子配列の規則性」を利用・制御することで可能となる技術です。このナノテクノロジーを駆使して、従来にない有機・無機ハイブリット機能材料の創製に関する基礎研究を行います。有機溶媒を用いずに高圧水により、自己組織化状態を変化させた有機ゲスト種を無機マイクロカプセル中に封入することにより、環境に優しい(有機溶媒を用いない)有機・無機ハイブリット機能材料の合成方法の確立をめざします。

基礎研究グループは温度、圧力によって変化する水や水溶液の物理的・化学的性質を明確にする研究が主体です。基礎研究グループによって得られる研究成果は実用化研究グループおよびシミュレーション研究グループの研究の基礎となるものであり、人類の抱える諸問題を解決する有用な技術(地球環境調和型新技術開発)への発展をめざすものです。

実用化研究グループ

建築廃材及び産業廃材の分別回収、再生・リサイクルに関する研究

建物解体時に廃棄されるコンクリート、木材、プラスチック等の各種建築材料や産業廃材を、超臨界水を用いて分別回収の上、資源化し、建築材料や他産業で利用可能なリサイクル材料とするマテリアルリサイクルシステムの構築を行い、更に再生建築材料の力学性状・耐久性の評価と設計法を確立します。

道路舗装材料の再生・リサイクルに関する研究

多量に排出されるアスファルト廃材を有効再利用する技術の確立のため、高温高圧水を用いた骨材分離手法の開発、分離した骨材の建設材料としての適用性の検討(強度・耐久性など)、建設材料として適用した場合の供用性の検討ならびに評価試験方法の確立、大規模処理施設構築のための検討などを実施します。

超臨界水反応装置に関する研究

超臨界水は高温、高圧の状態であり、非常に高い溶解性を示します。研究段階では、この環境下での反応装置材料としてニッケル合金のハステロイが使用されることが多く、実用的な大型装置には必ずしも最適な材料とは言えません。超臨界水を実用的に利用するためには、配管等も含めた大型反応装置用の材料の開発、構造の開発、溶接強度の解明は不可欠でありこれらの問題について検討します。

ハイドレート搬送システムに関する研究

深海利用技術の一つとしてハイドレートを海底からあるいは海底へ搬送する技術を検討します。自重や潮流の影響、固体状のハイドレートを含む多相流からのパイプ壁面への損傷等を考慮して、重量の割に強度が高く、剛性が大きくかつ耐食性、耐摩耗性のよいパイプの開発を行います。また、安定搬送上で不可欠と考えられるハイドレートを含む多相流の搬送抵抗、閉塞性についての検討も行います。

シミュレーション研究グループ

セルオートマトン法による高圧反応条件、反応容器の最適化に関する研究

相転移を伴う現象の数理モデル構築、超臨界流体のシミュレーション、ガスハイドレート結晶成長過程のダイナミクスおよび反応器の設計などのシステム最適化について研究を行います。このテーマで取り扱う計算手法は、混合物の相変化に対する基礎理論から、装置設計の最適化まで幅広い分野に適用できます。

大規模シミュレーションのためのプラットホームの構築と二酸化炭素深海貯蓄のためのシミュレータの実装

240のCPUを効率良く稼働させる並列・分散マルチエージェントプラットホームを構築し、パイプ内を進む固液混相の二酸化炭素ハイドレート挙動シミュレータ、CO2の海水溶解シミュレータの開発を行います。これらの研究では、海水潮流中での輸送、貯蔵、溶解が対象ですので、海水潮流の大規模シミュレータの開発も併せて行います。

シミュレーション研究グループでは、水および水溶液の広範な温度、圧力における物理的・化学的性質を、微分方程式を解くこと無く、自己組織化モデルからシミュレーションできることが最大の特徴です。これより基礎研究グループによる物性データの評価および他の条件への拡張が可能となります。一方、材料設計、超臨界水分解反応の最適条件、海水潮流中の力学的解析など実用化研究への寄与は、セルオートマトン法およびマルチエージェント法と2つの異なる手法で予測します。本研究グループでは、新しいシミュレーション手法を先駆的に研究している学内外の共同研究によって、データの評価から材料設計条件の最適化まで可能となります。

※ 上記掲載内容は、プロジェクト実施当時のものです。

このプロジェクトの研究報告書