生産工学部は企業経験のある教員が多い学部です。私の場合は医薬品メーカーに数年勤め、企業として何をすべきか、社会は何を必要としているかを肌で感じてきました。その感覚を学生たちに伝えることも、キャリアサポートの一環。専門知識ばかりでなく、企業が求めるコミュニケーション能力やプレゼン能力も身につけてほしい。そのためにグループワークを強化するなど、授業を工夫していくことも私たちの役目です。インターンシップを全員に課すのも、企業や社会の中での自分のあり方に早く気づいてほしいから。2013年度に本学科から卒業した佐藤美咲さんも、インターンシップ先で自立心を芽生えさせたように思います。

もともと成績優秀で空気を読むことにも長けた学生でしたが、先方でも大いに気に入られ、ある分野においては目覚しい結果を残したと聞いています。
彼女から相談事を持ち込まれても、私が答えを指し示すことはありません。聞き役に徹し、ちょっとしたヒントを与えれば、あとは自分で答えを見つけだせるから。今も仕事に悩むことはあるようですが、悩むべきことにちゃんと自分で向き合っているようです。彼女には学科の取り組みであるOB・OG交流会にも何度か参加してもらい、就職活動について、就職先の企業や仕事について、後輩たちと語りあってもらっています。学部単位で言えば、4日間に400社もの企業が来校する説明会もあり、ここにも多くの卒業生が参加します。学生たちにはこういった機会に、自立した社会の先輩たちから刺激を受け、自分の生き方を自分で決められる人になってほしいと思います。

※記載されている学年は取材当時のものです。

中学生の頃から化学が好きで、将来は化粧品の開発に携わり、多くの人に喜んでもらうことを夢見ていました。生産工学部に入ったのは、オープンキャンパスでの直感から。雰囲気が良く、面倒見も良さそう。何より、自分がそこで学ぶ姿を自然にイメージできました。3年次の生産実習では、当初の夢に近い分析の仕事に。企業に入って研究開発に取り組む将来が、身近に感じられました。その後、卒業研究では分析化学を専門とする中釜先生の研究室へ。それは有機化学、無機化学など、あらゆる化学に関わり、多くの人の役に立てる学問でした。
就職活動でも研究開発の道を目指し、いくつかの企業にエントリー。思い描いた通り、だけど何かがしっくりこない。

いろいろな人、特に中釜先生には何度も相談を持ちかけました。エントリーシートの書き方、面接での受け答え。どんなことでも真剣に向き合って下さる。先生の視点を借りながら、何度も自己分析を繰り返し、やっと気づいた。人に喜んでもらえること、理系の知識を生かせること。さらに、いろいろな人と話せることが、自分のやりたいことだったと。その3つを満たす仕事が、研究開発とは限らない。そして、分析機器の営業という仕事と出会う。その面接では、飾ることなく、自然に話すことができ、4年前と同じように、そこで働く自分をイメージできました。あの時、本当の自分に気づき、社会人3年目のいまも自分らしく働けているのは、中釜先生やいろいろな人の支えがあったから。今度はOB・OG交流会などを通じ、自分が生産工学部の後輩たちの力になれたら、うれしいです。