■■■■■■■■■■■図2 受講前年度のGPAと当該科目で実施した単元試験の平均得点率との相関着席位置も既報3)と同様,教室内の座席を9ブロックに分割して設定した。すなわち,左右列はスクリーン正面の着席可能な縦3列を廊下側,窓に近い3列を窓側とし,残りの縦列を中央とした。一方,前後列については3列ごとに前列,中列,後列とした(図1)。4.1 GPAと単元試験の平均得点率との相関既報3)では,受講前の学業成績として受講前年度のGPA,当該科目の学業成績として該当科目で実施した前単元試験の平均得点率を指標とした。GPAが高い学生は高い得点率が予想されるため,着席位置の教育的影響と分けて考える必要がある。本論文ではまず,GPAが高い(低い)のに得点率が低い(高い)着席位置を抽出するために,ブロックごとにこれら2つの指標間の相関を検討した(図2)。その結果,5つのブロック(図2中,〇)についてはGPA(x)と平均得点率(y)との間に高い正の相関が認められた(y=12.51x+31.77,R2=0.9317)。しかしながら,中央の後列(図中,CB),廊下(スクリーン)側の前列および後列(同SFおよびSB)は相関より下に外れていた。これらのブロックに科目初期に着席した学生は,GPAから予想される得点率より低い得点率であったことがわかる。一方,廊下側の中列(同SM)は相関より上に外れていることから,GPAから予想される得点率より高い得点率の学生が着席していたことがわかった。本論文では,この要因が科目進行に伴う着席位置の変更に関係すると推測した。相関(図2)から外れた4つのブロックについて,科目進行に伴う各─ 4 ─(W:窓側,C:中央,S:廊下(スクリーン)側,F:前列,M:中列,B:後列。)図3 科目初期,中期および終期における全受講生の各ブロックでの着席率ブロックの着席率および科目初期に該当ブロックに着席していた学生の着席位置の変化についてそれぞれ分析した。4.2 各ブロックにおける科目進行に伴う着席率の変化科目の進行に伴ってブロックの着席率が低下した場合は,着席していた学生が他のブロックに移動していることになる。図3に,全受講生の科目初期,中期および終期における各ブロックの着席率(着席した学生の総数に対する着席可能な総座席数の比)を示す。科目初期における延べ受講者数は213名(男子176名,女子37名)であり,科目全体の着席率は78.9%であった。科目中期および終期の延べ受講者数は216名および201名,着席率は80.0%および74.4%であり,科目終期において着席率の低下が見られた。各ブロックの着席率に着目すると,窓側前列(図2中,WF)の着席率の低下が顕著であった。これは,スクリーンに投影されたスライドが見づらかったために,学生が中央や廊下側の前列(同CF,SF)などに移動したためだと考えられる。相関から外れた4つのブロック(CB,SF,SMおよびSB)のうち,SFとSBは着席率が中期,後期でやや高くなり,CBとSMはやや低下していた。図4に当該年度受講者について図3と同様の分析を行った結果を示す。科目初期における当該年次受講者の延べ人数は195名(男子160名,女子35名)であった。1授業回あたりの平均受講者数は66名であり,教室全体としての着席率は72.2%であった3)。科目中期および終期の当該年次受講者の延べ人数は195名および183名,着席率は72.2%および67.8%であった。科目初期から終期における受講者全体の減少数(127065SM60CM55502.02.2(値は科目初期に各ブロックに着席していた当該年度生の平均値。W:窓側,C:中央,S:廊下(スクリーン)側,F:前列,M:中列,B:後列。)CFWBWMSBSFCB2.42.62.8WF3.0100806040200WFCFSFWMCMSMWBCBSB■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■4.結果および考察
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