日本大学生産工学部研究報告B(文系)第56巻
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室で食べるスタイルであった。監視がついているわけではないが当然外出も控えるよう申し渡されており,練習以外でホテルの部屋の外に出ることはほとんどなかった。時折,早朝の散歩を楽しむ程度であった。試合日が近づくと選手村への移動となるわけであるが,選手村への入村においても合宿時に行っているそれとは別に前日に唾液の採取での検査で陰性が証明されて初めて入村の許可がおりた。さらには,スマートフォンアプリでの健康管理も強く推奨され,『接触確認アプリ(COCOA)』『TOKYO2020参加者用アプリ(OCHA)』のダウンロードおよび活用を求められた。OCHAは毎日の自身の体温を入力して健康状態を管理するほか,外務省のビザ発給システムと連携しアプリ内からビザの申請を受け付けるようにする。また,空港の検疫や税関の入国管理で本人情報をQRコードで表示し使用する機能や,競技会場の入退場に活用する顔認証システムと連携させ,現地スタッフがユーザーの健康確認を「○」「×」などで分かりやすく表示する機能もあり,参加する選手やコーチはもちろんであるが主に海外からの観戦者にむけて開発された経緯があるようだ 3)。この二つのアプリであるが,機能的な不備が指摘されるなど画期的なシステムとはいえるものではないように感じた。試合の流れは,コロナ禍での開催であっても基本的には変わりはないが様々なシーンで対策がとられていた。当然ながら,選手以外のコーチ等はマスクの着用は必須。ウォーミングアップや実際の試合場でバーベルを握る際に必ずと言ってよいほど選手が使用する白い粉末(炭酸マグネシウム)は,普段は各アップ場や試合用プラットフォーム脇に設置されており選手間で共用が通常であったが,今回の試合では個人で袋に入れて持ち歩き使用するというスタイルになった。一人の選手がバーベルを挙げ終わった後は必ずバーベルならびに周辺の消毒作業が行われる。これに加え,日本チームは練習時から試合時においてもコーチングスタッフ等は常にゴム手袋を着用しバーベルのセッティングや選手の指導にあたっていた。3.4 選手村今回の東京大会では2つの選手村が存在することとなった。まずはメインである晴海地区のオリンピックパラリンピック選手村であり,この選手村は分譲前のマンション群であり臨海地区の新築のマン─ 19 ─図4  このブースへ各国の選手団全員が毎日検体を提出するションであった。基本的には全競技の選手団全員がこの晴海地区の選手村で生活する予定であった。しかし,今回の東京大会においては滞在人数を抑制するためということで様々な改定があった。まずは一軒での人数であるが,3LDKほどに6〜7人で生活することが必至であったが,1人1部屋の使用が原則となりウエイトリフティングチームにおいては監督と選手はメイン選手村。それ以外のコーチはバスで10分ほどの指定された選手村外の指定ホテルという住み分けになった。選手村へは例え昼食や夕食を摂らないとしても,毎日の義務として採取した唾液を図4のCOVID-19ブースに提出するために出向くことになる。メインである選手村での私の生活は,検体の提出と食事に出向くことであった。メインダイニングは2階建てで3,000席が用意され,日本食をはじめ中華・ハラル・グルテンフリーなども並び700品ほどのメニューがあり24時間食事を摂れるとても規模の大きいものであった。入り口にはアルコールスタンドがかなりの数が設置してあり係員に促され手指の消毒を行い,荷物があればクロークへ預けてからの入場となる。まずは,手袋を装着しトレーを手にする。好きなものを好きなだけ皿に盛ってもらえる。それぞれがとても美味しい料理であった。その中でも海外選手が特に絶賛していたものが焼き餃子とピザだったように思えた。それぞれがどこのものかを尋ねてみると,両方とも有名企業の冷凍食品とのことであったことに驚いた。全種類を食したい気持ちが強かったがとてもとても品数が多くて手がまわらないのと,とにかくフロアが広いのでターゲットを決めて食材をとっていかないと,目当てのものを手に入れるのに相当な距離を歩かなくてはならなくなるなど手間がかかる。今日は和食気分ならそのブース付近で済ませることが賢明であった。全種類食せなかったことは,今でも残念に思っている。

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