4.4.2 Ａ-４②文書【英文タイトル】Certificate（遺体の本人証明書）【日付】1948年12月23日付【発信】─【宛先】─【解題】 この文書は，遺体の身元が処刑された本人であることを証明するものである。証明者はLee P. Vincent中尉で，この人物はスガモプリズンの看守を務めた人物である。証明書には遺体が本人に間違いないことの理由が記されており，その根拠としては中尉が22か月間の監視任務で得られた東条ら７名との面識を上げている。また，この本人確認作業の立合人としてFrierson少佐が署名している。なおこの文書の書式・記述内容は巣鴨プリズン記録（Sugamo Prison Records）の資料群に保管されているものと同じである。4.4.3 Ａ-４③文書【英文タイトル】Death Certificate（死亡証明書）【日付】1948年12月23日付【発信】─【宛先】─【解題】 この文書は，刑死者の死亡証明書で，それぞれの刑の執行時間と死亡時間が秒単位で記載されている。土肥原，松井，武藤，東条ら４名の刑の執行時間は午前０時01分30秒に，そして広田，板垣，木村ら３名は午前０時20分に行われたことが各証明書に記されている。また死亡時間も秒単位で記されており42），いずれの死亡証明にも２名の医務官のサインが付されている。4.5 Ａ-５文書【英文タイトル】Ａ-５ Statement of Facts Concerning the Execution of Seven Japanese War Criminals, 23 December 1948（1948年12月23日における７名の日本人戦争犯罪人の処刑に関する事実の陳述）【日付】1949年１月４日付【発信】第８軍需品部Luther Frierson少佐【宛先】第８軍需品部本部【解題】 このＡ-５文書は７名の遺体がスガモプリズンから搬出され，久保山火葬場での火葬後に遺灰が太平洋に散布されるまでの過程を詳細に記した報告書である。作成者はFrierson少佐で，ここでの少佐の肩書は第８軍需品部慰霊部門（Memorial Division）の主任と記されている。このＡ-５文書の内容は，遺体の監視と火葬任務に携わった者しか知り得ない情報が記載されており，更にはその記載内容に間違いがないことを証明するために，遺体搬送に携わった第108墓地登録小隊隊員らによる内容確認のサインが付されている。このＡ-５文書によると，隊員がサインをする際には，少佐が隊員に対して報告内容を読み上げ，そして彼らに確認させた上でのサインであることが添書きされている。ところでこのサインには興味深い点がある。それは隊員による内容確認サインの対象がＡ-５文書第１項ｇ，ｈ，ｉ，ｊ，ｋに対してであり，７名の遺灰を海洋散布したことを記した同項ｌについては，隊員らの確認対象から外されていることである。おそらくこの措置は遺灰散布情報の秘密性を保つためのものと考えられ，隊員にすら公にしなかったようである。このことから遺灰散布行為と散布地点を把握する当事者は，少佐と連絡機の操縦士だけとなる。4.5.1 遺体の搬送ルートの判明少佐の報告書であるＡ-５文書から明らかになったことは，まず１つ目に上げられるのは，刑死者の遺体がスガモプリズンを出発してから，横浜の久保山火葬場に至るまでの詳細である。報告書によれば，遺体と警備将兵を載せた車列は12月23日午前２時10分にスガモプリズンを出発し，午前３時40分に現在の横浜市中区本牧緑ケ丘37番地にあった第108墓地登録小隊の施設に到着したとある。その間，施設内で遺体の最終確認を行い，午前７時25分に施設より久保山火葬場へ出発し，午前７時55分に火葬場着。そして７名の遺体が火葬炉に入れられたのは午前８時５分と報告されている。なお火葬場内の動向や遺灰の海洋散布の時刻は記されていない。このように，遺体がスガモプリズンから，いったん第108墓地登録小隊の施設に搬入されていたことは，これまで把握されておらず，当時の新聞報道では読売新聞が「横浜市中区矢口台の米軍墓地に向かった」43）と報じたり，あるいは取材目的の新聞記者をまくために，遺体はいったん神奈川県川崎の進駐軍の基地に入ったとする，久保山火葬場から東条らの遺灰の入手を試みた三文字正平弁護士の証言が知られている44）。しかしながら少佐の報告書からは，遺体の搬入先は米軍墓地や川崎ではなく，横浜市中区本牧緑ケ丘の第108墓地登録小隊の施設であり，そして久保山火葬場に直接向かわなかった理由表１ Ａ-５文書に記載されていた遺体の動向を示す時刻時 間午前２時10分スガモプリズン出発午前３時40分第108墓地登録小隊施設到着午前７時25分第108墓地登録小隊施設出発午前７時55分久保山火葬場到着午前８時05分遺体の入炉─ 10 ─遺体の動向
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