日本大学生産工学部 研究報告B(文系)第51巻
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─ 7 ─て提出されたが,「やった!」という意味でイディオムとして使われることが多いようであるため現在完了の例文に含めないこととした。⑷は仮定法のif you were…の例文として提出されたが,「…かどうか」(=whether)という意味で使われているため,仮定法の例文から除いた。訳出の担当者から「英語が自然すぎて学習者用の英語例文として妥当な日本語訳がつけられない」等の理由で削除された英文の事例として,⑸~⑻を紹介する。⑸ He was called away.⑹ Her heart was locked away.⑺ Playing basketball has done a lot for me.⑻ Have you done anything about the mess in your room?受動態の初級レベル例文⑸と⑹は非常に短い文であるため,文意を理解するにはさまざまな状況や場面を想像して理解する必要がある。そのため,適切な日本語訳がつけられず,初級用の学習用例文として適切でないと判断された。中級用の例文⑺と⑻も同様の理由で削除された。教育用例文として内容が悲惨であり適切でないと判断された⑼と⑽は削除された。⑼ The boy killed by the re also lost his mother.⑽ Many people exposed to radiation later died.2.4 学習支援のための日本語訳出方針と事例初級英語学習者にとって日本語訳は,英文理解の助けになるだけでなく,安心感を与えるものである。教育用例文コーパスSCoREでは英語の検索結果だけでなく,日本語訳の検索結果もパラレルに並ぶため,英語に対応する日本語訳や,句読点などの形式も統一されている必要がある。SCoREプロジェクトでは第1次SCoRE開発時点から,下記のようなプラクティカルな日本語訳出の方針を決めてできるだけこれらに従うように努めている。⑴ 日本語訳出は,学習者のレベルに配慮して,可能な限り当該文法項目が明示的になるように訳を直訳傾向にする。⑵ 「です,ます」調にする。⑶ 漢字は必要最低限にとどめ,難しい漢字は使わない(表2参照)。⑷ Iは「私」,youは「あなた」,「達」は「たち」,「人々」は「人たち」,主語の時は「人びと」,theは可能な限り「その」を訳出する。⑸ ( )を付けた説明的な訳を付与しない。⑹ 句読点は全角のカンマと丸(,。)を用いる。文中では,英文にカンマがある時や,日本語訳にカンマがないと正しく意味が取れない時に限り,カンマを用いる。疑問文には半角の?を付ける。⑺ 数字は基本的に半角,算用数字を用い,「一人」でなく「1人」とする。続いて,SCoREを使った指導実践において,学習者や教員から指摘されて,日本語訳を修正したり統一したりした事例を紹介する。これらの多くは,日本語訳を見ながら,英文の空所を補充していく「適語補充問題」を解いている授業中に指摘された。日本語訳が直訳でなかったりすると,解答が「非常に答えづらい」という声に応えて,修正した事例として⑾と⑿の副詞の例文の事例を挙げる。⑾ He started running suddenly.  彼は急に走り出しました。⑿ He thought hard.  彼はよく考えました。表2 漢字表記の統一例足跡→足あと喧嘩→けんか咳→せき丁度→ちょうど下さい→ください詮索→せんさく誰→だれ眼鏡→めがね叱る→しかる出来→でき皆→みんな全て→すべて何処→どこ観る→見る煙草→たばこ頻繁→ひんぱん泣き止む→泣きやむ為に→ために欲しい→ほしいなに→何尋ね→たずね幾つ→いくつ美味しい→おいしい時→とき居る/要る→いる叔父→おじ友達→友だち頂け→いただけ置く→おく捉える→とらえる鞄→かばん捜す/探す→さがす嘘→うそ鍵→かぎ様々→さまざま分かる・解る→わかる

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