日本大学生産工学部 研究報告B(文系)第51巻
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( 5 )図工」しかなく、「仕上工」(「鋳物品、鍛工品又ハ機械加工ヲナシタル部品ヲ鑢等ヲ以テ手仕上スル作業」)、「溶接工」(電気・瓦斯)、「焼入工」、「組立工」「製缶工」「板金工」「鋳物工」は全て男子限定である((注(注。次に「車両工場」では、「汽車、電車の製造工場の作業」が列挙されている。これらもやはり男子の作業であり、所要性能は、「視力」「目測」「注意」「判断」「指動」「動作」「確度」が「模型工」に求められるほかは、基本的な「注意」「視力」「握力」「打撃力」が求められており、「鋳物工」「製缶工」(銅鉄ヲ屈伸延長セシメ鋲ヲ以囲ム作業)、「鍛冶工」「機械工」(旋盤其ノ他ノ機械ヲ操作ナス作業)、「仕上工」「製材工」「木機工」「刻工」「組立工」「塗工」「電工」が列挙されている。女子が可能なものは「検査工」だけである((注(注。「製鋼工場」は前二つと異なり、作業工程が【図3】のように示されるとともに、「原料鉄の事」として、「滋鉄鉱」「赤鉄鉱」「褐鉄鉱」の種類、「銑鉄」「錬鉄」「銅鉄」の種別用途、溶解と精錬法が示されている。表では「製鋼工」「製鉄工」「鍛鋼工」「機鎚工」「圧延工」「調質工」「鋳造工」「疵取工」の八つがあり、所要性能は共通して視力、判断、推理、運動調節、反応速度、耐久力である。基本的に立業でほぼ男子に限定されており、女子は「機鎚工」のみであった((注(注。「飛行機制作工場」でも作業工程の欄があるが図ではなく文章であり、「最近に急激発達せる工場」であること、「事変下に於ては其需要急進を要し、それの要因も日々必要度を加へ」ているが、「地方に於て是等工場の視察せるもの殆ど無きものと思慮せらる」ために解説を加えたとある。すなわち当該時期須坂において重要視され始めた工場であったことがわかる。ここでは作業概要として、飛行機を構成する各部分の大体として主翼部、胴体、尾翼、降着装置が説明されたうえで、製作部門には、機体製作部(製図、写真作業、木機工、木工作業、電気爐作業、鍛冶、銅工、溶接工、調質作業、線工、仕上作業、縫工、塗工、検査及分析作業、電工作業)、機関部及付属品製造部(製図及写真作業、木型製作、鋳物作業、鍛冶業、検査工、機械作業、推進器製作、放熱器製作、仕上作業)、組立工場(組立作業、取付作業、運転工)と指摘されている。機体製作部はこれまでの工場での説明と重複する八種類を除いて七種類が記されている。表ではこれらの説明がこれまで同様に一覧化されているが「縫工」を除いて男子限定であった((注(注。【図3】製鋼工場作業工程の図総じて言えることは、「機械」「車両」など、項目を列挙して終わっている紹介と、作業工程を記し原材料や現況を記した「製鋼工場」「航空機工場」などとの差が著しいことである。これは須坂職紹に名古屋の飛行機製作所などからの、関連する求人が多いことと連動したためと考えられる。有力な紹介先については説明が丁寧になされ、十分な理解を求めようとしたことがわかる。5.職業の説明②―製糸紡績系続いて、製糸紡績系である。まず、「生糸製造工場」は須坂の基幹産業だったこともあり、【図4】のように作業工程が図式化され、繊維工場作業比較表が作業として準備作業、製造作業、仕上作業と、種類として生糸、綿糸紡績、瓦斯糸、朝紡績、人絹及びステーブル原料紡績、人造絹糸とで明確に分類されている。さらに昭栄製糸株式会社須坂工場、片倉製糸紡績株式会社田中製糸所の写真付きである。作業風景と説明が連動している点も特徴である。ここでは、「撰繭手」「繭量手」「煮繭手」「配繭手」「繰糸工」「再繰工」「検査工」(「糸量検査」「光沢検査」「セリプリン検査工」)「糸捻工」「括束工」「運搬手」「汽缶士」「乾燥工」の職名と作業状態が説明されている。所要性能は共通して視力、注意、観察など五感と最低限の体力が求められている。ただし女

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