日本大学生産工学部 研究報告B(文系)第51巻
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( 6 )子は、「撰繭手」「繭量手」「繰糸工」「再繰工」「糸量検査」」「糸捻工」のみであり、「繰糸工」「再繰工」「糸捩工」は機械を踏む足と、歯で糸を切るためであろう、門歯が正常であることが求められている((注(注。【図4】生糸製造工場作業工程と昭栄製糸、片倉製糸の労働者写真「綿糸紡績工場」も原料から加工を経て製品化する作業工程が図で示され、東洋紡績株式会社天満工場の精紡工、大日本紡績株式会社尼崎工場の粗紡工、鐘淵株式会社住道工場の連篠工、東洋紡績株式会社住吉工場の合糸工、興亜紡績株式会社福井工場の打綿工、日東紡績株式会社名古屋工場の混棉工の写真がある。全国の写真が掲載されているのは、須坂の基幹産業でもあり資料が豊富に存在したことが考えられるが、就職先が長野に限定されないことを示していると考えられる。職名は、「原棉係」「開俵係」「混棉工」「ピツカー(米)/打棉工/スカツチ(英)」「梳棉工カード(英)」「練篠工/ドローイング(英)」「粗紡工」「スピード(英)」「精紡工」「綛掛工」「合糸工」「撚糸工」「保全工」「試験工」がある。作業状態が詳細に説明され、所要性能は注意力、視力、触覚、判断などのほか、ほぼ立業の単純作業であるためか、「根気」が求められた点が特徴である。備考に記載された事柄で他業と異なる点として、「打棉工」「梳棉工」「練篠工」「粗紡工」「精紡工」「綛掛工」「合糸工」「撚糸工」が「二ヶ月位ノ修業ヲ要ス」女子限定であるとされ一定の熟練が求められること、男子は「原綿係」「開俵係」に限定されていることである((注(注。「人造絹糸製造工場」では、作業工程が示され、「準備部」「原液部」、「紡糸部」、「繰糸部」「精錬部」「乾燥仕上部」の三種類、一三工程から人造絹糸工場が成り立つことが示されている。作業概要は極めて複雑であり、原料パルプ室の操作、浸漬室、解碎室、老成室、硫化室、熟成室、紡糸室、ケーク、キャビネットルーム、巻取室、漂白、選別室、括造りが詳細に解説付きで示されている。適職表として、「準備部」「原液部」「紡糸部」「繰糸部」「精錬部」「乾燥仕上部」の職名、これに対応する所要性能はそれぞれ注意、推理、握力、理解、健康、さらに視力、器用、耐久といった要素が示されている。化学薬品を多用する業務であるがゆえに、注意力と握力が特に求められた。所要体位は立業、歩行、椅子と三種類、「繰糸部」を除き男子である((注(注。「織布工場及び瓦斯糸製造工場」では、工場作業工程が示され、瓦斯糸工場が綿糸紡績工場に並置される作業と説明されている。日清紡績株式会社名古屋工場整経工、鐘ヶ淵紡績株式会社上田工場レース織機工の写真があり女子と男子の作業風景がうかがえる。織布工場の表は「巻返工」「整経工」「糊付工」「織布工」「仕上工」(検査工・カレンダー)の五つ、所要性能として注意、視力、判断、根気、判断が求められ、織布工のみ聴力視力触覚、反応速度が求められている。基本的に手を動かす作業のみで立業、基本的に女子限定労働であった。これらもまた興亜紡績株式会社熱田工場捲返工、豊田紡織株式会社南工場、酒井繊維工業株式会社の女子労働者の写真によって強調されている。瓦斯糸工場は「瓦斯焼工」「精紡工」の二つで、視力、注意力、健康と機敏、注意が所要性能、従業体位は立業、前者は「修行要二月」の女子、後者は男子のみ、大日本紡績株式会社大高工場の瓦斯焼工の工場ラインの写真のみ掲載されている((注(注。「製麻工場」では、「製麻作業工程」として、原料から機械による作業工程を経て粗紡工・精紡工を経て荷造りされる過程と、「ホース織製工程」として原料から製品ホースへ至る図が示されたのち、各作業工程に応じた職名・作業状態・所要性能・所要体部・従業体位が表で示されている。原料加工の職名は「解俵手」「浸油工」「軟線工」「カッター工」「フレーカー工」「カード工」「ハックリング工」「スプレッター工」が注意力と視力を中心に腕を使う女子労働として記載され、「粗紡工」として「トローイング工」「ロービンク工」が視力と注意、推理を使う女子労働として記載されている。ついで「精紡」として「潤紡工」「乾紡工」「チーズワインダー工」「綛揚工」が
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