日本大学生産工学部 研究報告B(文系)第51巻
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─ 3 ─2.SCoRE例文の全面改訂本節では,教育用例文SCoREの核となる英語例文の全面見直しと改訂,それに伴う日本語翻訳の修正について報告する。日本の英語教育に効果的にDDLを導入するため,SCoREには,大多数の日本人英語学習者にとって適切な難易度かつ著作権フリーの英語例文が蓄積されている。これらは英語教育経験のある英語母語話者3名が,本プロジェクトで独自に構築した3,000万語の英文ソースコーパスから抽出された英文をモデルにして作例した,簡潔で自然なオリジナルの英語例文である。作例過程の詳細は,Chujo, Oghigian, & Akasegawa(2015)19)を参照されたい。3名の英語母語話者は,年齢が20代,50代,60代に分布するため,英語例文のスタイルに若干のバラツキがあることが推測された。そこで,3名の中核となっているリーダーの作例者(50代)1名が平成29年度の約1年をかけて,第3次開発版の英語例文すべてを,教育的基準,すなわち,簡潔さ・自然さ・難易度などの観点から見直し,改訂候補を作成した。続いて,英語母語話者が提出した改訂候補の英語例文に日本人の英語教員が日本語訳を付けた。その際,3名の訳出担当者は,当該英語例文が学習支援の目的を有するSCoREの例文として妥当であるかどうかの確認も行い,必要な場合は修正および削除を行った。第3次開発版の10,113文(99,442語)のうち1,254文が入れ替えられ,加えて,追加の英文が増補され(2.2節参照),最終的にSCoRE第4次開発版の例文総数は10,459文(101,521語)となった。以下,2.1節に,第4次開発版での文法項目,キーワード,レベル別例文数の一覧を示す。2.2節で今回の改訂において追加したキーワードとそれらの例文の増補過程について述べる。2.3節では,SCoREの英語例文の修正や削除の事例をいくつか紹介する。2.4節では,学習支援のための日本語訳出方針と用語の統一例や日本語翻訳の付与の際の修正の事例を紹介する。2.5節で,次回の第5次開発で増補予定の「14の主題分野」に属する英語例文5,217文(32,713語)の作成について述べる。2.1 SCoRE第4次開発版の文法項目,例文数一覧表1に,SCoRE第4次開発版で利用できる文法項目と各項目に含まれるキーワードとそれぞれの例文数の一覧を示す。各キーワードに対して,初級・中級・上級の各レベルに標準で10文の英語例文が含まれている。例えば,大分類「代名詞」の下位の「指示代名詞」に含まれるキーワードthatを含んだ例文はレベルごとに10文ずつ収録されている。SCoREに収録されている英語例文の難易度レベルは「文長」と「語彙習得学年」に基づいて区分されている(若松・石井・中條,2015)20)。例えば,初級の英語例文His voice is louder than that of mine.は米国の語彙習得学年の1~2年生の語彙を用いて8語以内,中級はRyan’s nal score exceeds that of Robert’s by 100 図2 SCoREの英語版トップページ
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