日本大学生産工学部 研究報告B(文系)第51巻
32/60

─ 30 ─2.2 評価用英語例文の抽出方法2.2.1 英語例文に含める文法項目英語例文に含める文法項目を選定するために,CEFR A1,A2レベルの日本人英語学習者がどの文法項目を苦手としているのかを調査した中條・横田・長谷川・西垣(2012)16)の結果を参考にした。Table3に示すように(中條・若松・石井・宇佐美・横田・オヒガン・西垣,2015より再掲)17),中学生レベルの文法項目においては所有代名詞,名詞複数形,現在完了形など,高校生レベルの文法項目においては仮定法,関係詞,前置詞などが不得意項目であることが特定されている。今回の英文難易度評価に用いる英語例文には,高校生レベルの文法項目で大学生が不得意とする「仮定法,関係詞,前置詞」が含まれる英文を4種のコーパスから抽出することにした。2.2.2 3種の検索語句不得意文法項目を特定するために使われた上述の調査の問題文に基づいて各文法項目の検索語句を決定した。なお,各文法項目には複数の問題文が出題されていたため,一番不正解率の高い(正解率の低い)問題文を参照した。1)仮定法では,次の文のカッコ内を補充する問題文の不正解率が89%であった。If you had worked harder, you (could) (have) (passed) the exam.仮定法の文で上記のカッコ内のcould have passedのパターンを含む英文を抽出するには,[If * had *]というIf節を導く検索語句を使って,各コーパスから上述のパターンの例文を検索した。2)関係詞では,次の文の不正解率は78%で,関係詞関連の問題で最低の正解率であった。I always believe (what) you say.上述のwhat you sayのパターンを抽出するために,検索語句は[what * say/sa*]とした。3)前置詞では,次のin front ofを問う問題文の不正解率が59%であった。Please have a seat (in) (front) of me.そこで,検索語句は[in front of]とした。2.2.3 例文数と例文抽出の基準目的も規模も異なる4種のコーパスから公平な例文抽出を行うために,以下5点の基準を考慮することにした。1)上述の検索語句を検索して得られた検索結果から抽出する例文数は,各コーパスにつき2文ずつとした。例文数が多すぎると,回答者の負担が重くなるからである。2)SCoREは初級,中級,上級の各レベルから2文ずつ抽出することとした。3)例文は原則として検索結果の先頭から2文を選択することにした。4)例えば,検索結果が断片的な文の一部であるなど,検索結果の先頭の文に評価用例文として妥当な例文が得られない場合は,検索結果の先頭から評価用例文として使用可能な文を順に探して選択した。BNCの場合,検索結果には,文ではなく本や論文のタイトルなど断片的なものが多く出現した。5)上述の検索語句を検索して検索結果が得られない時には,検索語句を少し変えることによってほぼ同内容の文法項目を含む例文を得た。例えば,CoBLEは小規模コーパスのため,検索語句を部分的に変える必要があった。例えば,[what * say/sa*]は [what * *]に変えて検索して,同様のパターンをもつ例文を得た。2.2.4 例文の提示順序最終的に得られた例文数は,1つの検索語句につき,コーパス6種(SCoREの3レベルを含む)×2文で,Table3 Examples of Targeted Remedial Grammar Items 中学文法項目高校文法項目1所有代名詞(属格)(47%)1仮定法 (79%)2名詞複数形 (44%)2関係詞 (61%)3現在完了形 (43%)3前置詞 (60%)4間接疑問文 (42%)4否定 (61%)5受動態 (41%)5接続詞 (50%)6否定形 (37%)6助動詞 (45%)7存在構文 (34%)7動名詞 (39%)8時制 (34%)8副詞 (38%)( )は不正解の割合

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る