日本大学生産工学部 研究報告B(文系)第51巻
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─ 19 ─点」,「SCoREの改善点」という記述を求めた質問項目も作成した。結果を表5に示す。46名の回答で2名以上があげた感想を10例示した。易しい例文を豊富に観察できること,中高の文法項目をほぼ網羅していること,3レベルから検索結果も適語補充問題も選べること,好きな時にアクセスして自習できること,パソコンを使った英語授業は教科書を使う他の英語授業と違うことなど,好意的で前向きな感想が多く寄せられた。実際,参加者は90分の授業中ほぼ常に集中して学習していた。表5 SCoREを使ったDDLの良い点・ 一度に多くの文を比較できる・ 単元ごとに勉強しやすく見やすい・ 初心者にもわかりやすい・ 例文が多くすぐできる・ 間違えたところがすぐにわかり覚えやすい・ 広範囲の勉強ができる・ 簡単な例文を見つけて理解できる・ 難しさを選べる・ 自習しやすい・ 他の授業とは違う最後に,今後のSCoREの改善に向けての学習者の意見を表6に示す。参加者から最も要望の多かった,SCoREをスマートフォンから使いたい,という意見に応えて,現在,タブレット端末用のm-SCoREが利用できるようになっている。教室や時間帯によって学内LANの速度が低下するため,今後は,環境に応じてスマートフォンを使用するm-SCoREの併用も検討したい。表6 SCoREの改善点・ スマホからでもできるようにしてほしい・ 検索語を打ち間違いしやすい,キーボードでの文字入力が厳しい・ 文法のカテゴリーを探すのが少し面倒くさいので探しやすくしてほしい・ たまに通信が重いときがあるからもっと軽くしてほしい・ 文字のサイズを少しだけ大きくするとよいと思う・ 文中にわからない単語が出てくることがある・ 適語補充問題のテストで部分点がほしい・ ネットでサイトを検索した時になかなか見つからなかったSCoREに収録されている教育用例文は英語ネイティブ・スピーカーが3,000万語規模のソースコーパスを参照して作例しているsemi-authentic あるいはmodied authenticな英語例文であるため,実際の言語使用規則に従った単語や語句を学ぶことができる。学習者にはそのような言語材料に触れることで英語力を伸ばしてほしいと考える。適語補充問題は機械的に採点するので部分点を与えることは難しい。そのため,他の小テストは教師が採点し,部分点を与えることで教育的な配慮を図っている。SCoREはGoogle等の検索エンジンから容易にアクセスできるが,授業の進行をスムーズにするため,アクセス方法を毎回,ワークシートや宿題プリントに記載するようにしたい。3.茨城工業高等専門学校におけるDDL指導実践茨城高専における2017年度の授業実践では,SCoREを(a)文法解説のために提示する例文や小テスト形式のプリント教材を作成するための教材バンクとして利用するとともに,(b)パソコンが整備されていない環境でDDLを実践するためのペーパー版「DDL文法学習プリント」を改変し利用した。また,(c)パソコン教室でSCoREを使ったDDLも実践し,学習者が目標文法項目の何に気づいたかについて観察したところ,例文に共通して現れる英語の「形式」だけでなく,形式に対応する「意味」にも注目できたときに,当該項目の学習効果が高いことが示唆された。3.1 SCoRE利用例1:教材バンクの利用と小テスト作成2017年度前期では,高専3年生(高校3年生に相当)を対象とした授業実践において,SCoREを,関連する文法事項が用いられている教材バンクとして利用するとともに,既習事項の理解を深めるための小テスト形式の問題作成にも活用した。具体的には,使用している教科書で,述語の後に目的語が2つ後続する第4文型(SVOO)が取り上げられている単元を学習する際にSCoREを利用した。この教科書は1単元4ページで構成され,単元ごとに読解セクション(500語程度の英文テキストと理解問題)と文法事項の解説(テキストに登場する文法事項に焦点を当てたもの),および発展問題が載っている。文法解説は要点が押さえられていたものの,一般的な規則以上の詳しい説明はない。そこで教師は,教科書から得られる文法知識を他文脈に応用するためのタスクをSCoRE教材バンクの例文を使用して作成した。まず,教科書に例文として掲載されている英文と,SCoREの英文から選択した例文を合計5文ほど板書した。続いて教師の側から,教科書の例文を使った明示的な文法指導を行った。その
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