日本大学生産工学部 研究報告B(文系)第51巻
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─ 15 ─「コンコーダンス」と「適語補充問題」の機能を組み合わせた,実用的で効率的な文法指導の実践である。前期からの観察で示されたことに,学習者たちが適語補充問題に非常に熱心に取り組むということがあった。学習範囲の文法項目とレベル(初級・中級・上級)を自分で指定してランダムに作成される適語補充問題に何度も挑戦する学習者も多い。SCoREの適語補充問題は,ゴールとフィードバックを明示的に提示し,学習者自身に文法という言葉のルールを運用することを促すという点や,パソコン画面上に操作結果がすぐに表示されるといった点において,ゲーム性を備えているということができ,学習者の自発的な取り組みを促していると考えられる。第4学期では,DDL検索タスクはシンプルなものにし,タスク数をしぼり,適語補充問題に時間をかけられるような授業の構成にした。1回90分の授業全体は,DDLによる文法学習とWebでのTOEIC語彙学習で構成されている。コーパスを利用したDDL文法学習は授業前半に実施された。学習者はSCoREを利用しながら,ワークシートに提示された5問のタスクに,協同学習をとおして取り組んだ。図1に第4学期2週目の「Unit 15: Wh- to do」で用いたワークシートおよび解答例を示す。また,本稿の付録1に実践で使用したUnit 16:前置詞,付録2にUnit 18:副詞,付録3にUnit 19:代名詞のDDLワークシートの例を付けた。これらには参加者が記入した解答例が示されている。図2にはDDLタスクの1問目で指定された検索語「よいか」の検索結果を示した。検索結果の画面からわかるように,「何と言ったらよいか」「いつ電話すればよいか」「いつ始めればよいか」「どの教科書を買えばよいか」「どう言えばよいか」はそれぞれwhat to say, when to call, when to start, which textbook to buy, how to tell himに対応しており,「よいか」を検索するだけで,wh- to doのwhat/when/which/where/how to doのすべての例文を一覧できる。このようにSCoREは日本語検索にも対応しており,学習目標である文法項目の日本語訳に含まれる「共通キーワード」が,図2の例のように容易に設定できる時には,積極的に日本語検索を用いている。教師はアクティブ・ラーニングのためのファシリテーターとして机間巡視と声かけをしながら,学習者を協同学習(ペア学習)に参加させ,タスクを解決できるように導いた。その後,まとめとして,教師はクラス全体に対し,タスクによって帰納的に導かれた解答について明示的説明を加えた。最後にSCoREの主要な機能の1つであるWeb適語補充問題(図3)を個別学習の形態で取り組ませ,学習者自身に,自分が学習した内容の理解度を確認させた。当該授業の学習文法項目,wh- to doについて1セット8問の適語補充問題を「今日の問題(クラス全員が同じテスト項目に取り組む)」と「ランダムに出題(コンピュータによって異なるテスト問題に取り組む)」を実施させ,ワークシートに得点を記入させ表1 2017年度リメディアルDDLシラバス週学期文法項目学期文法項目1Q1(Q1 & Q2事前テスト)Q3(Q3 & Q4事前テスト)2(SCoREイントロダクション)Unit 11現在分詞 (-ing)3Unit 1名詞複数形Unit 12過去分詞 (-ed)4Unit 2否定Unit 13動詞+分詞(-ing/-ed)5Unit 3現在完了Unit 14動名詞(-ing)6Unit 4関係詞(1) who/whose/whomQ3学習のまとめ7(Q1事後テスト)(Q3事後テスト)8Q2関係詞(1)の復習Q4Unit 15 wh- to do9Unit 5関係詞(2) when/where Unit 16前置詞10Unit 6関係詞(3) what/whyUnit 17接続詞11Unit 7仮定法(1) If …, … wouldUnit 18副詞12Unit 8仮定法(2) I wishUnit 19代名詞13Unit 9仮定法(3) could/would haveQ4学習のまとめ14Unit 10受動態(Q4事後テスト)15(Q2事後テスト)(TOEIC Bridge Test)
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