日本大学生産工学部 研究報告B(文系)第51巻
13/60
─ 11 ─SCoREを略したものである。m-SCoREは,今回の開発では,SCoREの4つのツールのうちの「コンコーダンス」の機能をもつ。基本的な機能は以下のようになっている。なお,前節で述べた適語補充問題の機能は次回の開発で組み込む予定である。1)ツリー構造で表示した文法項目から検索の対象とする項目を選択できる2)検索対象を初級,中級,上級,すべてのレベルから選択できる3)結果をサンプリングできる(5件,10件,20件)4)結果の並べ替えができる(出現順,キーワード左,キーワード,キーワード右)5)結果の表示形式は,検索語が中央に縦一列に並ぶ「KWIC(クイック)形式」と,文頭が左側にそろい例文全体を表示する「センテンス形式」を選択できる使い方はSCoREを踏襲しているものの,現行のSCoREよりもシンプルになっており,携帯端末に慣れた大学生にとって直感的に使いやすいものになっている。スマートフォンなどの携帯端末,タブレット端末のほか,デスクトップPCでも利用可能である。iPad,Android端末,iPhoneで動作確認をしている。通信環境やパソコンの性能が比較的悪い条件下でも動作することをめざして開発しており,今後,パソコンを使用した「本格的な」DDL授業でなくとも,普通教室の授業中に「スマホで検索してみよう」といった気軽な検索に使用する予定である。今後,学習者の感想を収集し,より使いやすいものに段階的に改良を加えていきたい。5.まとめ2012年に開始したSCoREプロジェクトは,現在,第4次開発が完了し,「関係詞」,「仮定法」など22の文法項目に対し10,459文の例文が収録されている。各例文については,英語母語話者が簡潔かつ英語として自然なものを作成し,日本人英語教師が日本語対訳を付記している。このようにSCoREはDDLのためのパラレルコーパスとして教育的基準に配慮しつつ英語教育の専門家により開発されてきたものである。教育用例文の大幅な拡大や修正はこの第4次開発でほぼ完了したと考えている。今後の課題としては,SCoREを多くの学習者・教師に活用してもらうこと,新しく開発したm-SCoREを手軽に授業中に使用するような授業形態を考案して実践することなどをめざしている。さらに,構築したSCoREコーパスを客観的に評価する必要がある。具体的には,SCoREに収録されている英文について,⑴学習者による英文難易度評定,⑵複数の教育用書籍で扱われている教育用語句のカバー率,⑶SCoREの意味分野別カバー率の分布,を客観的に分析することを次の研究として考えている。また,現在,紙ベースで収集している毎回の授業の感想などに関して,今後はスマートフォンを利用してQRコードで収集することを考えている。謝辞:本研究はJSPS科研費JP17H02366の助成を受けたものです。また,本研究の一部は平成29年度研究成果発表経費支援に係る経費補助を受けています。参考文献1)Aston, G., Learning with Corpora. Houston: Athelstan, 2001.2)Johns, T., Contexts: The Background, Development and Trialing of a Concordance-based CALL Program, in Wichmann, A. Fligelstone, S., McEnery, T. and Knowles, G. (eds.) Teaching and Language Corpora, London: Longman, 1997, 100-115.3)根岸雅史,「CEFRがヨーロッパに与えたインパクトと日本の英語教育への示唆」,Action Research Center for Language Education (ARCLE/アークル) 第2回研究会レポート,2009. http://www.arcle.jp/report/2009/0002.html図4 m-SCoREのスマートフォン画面例図5 m-SCoREのタブレット画面例
元のページ
../index.html#13