日本大学生産工学部 研究報告B(文系)第51巻
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─ 10 ─ことが可能となった。なお,「学生ID」を入力しなくても採点は可能である。この改良による利点には「教師が適語補充問題の実施状況をモニタリングしている」ということで,授業中や家庭学習における適語補充問題の実施に対する学習者のやる気を促進する一助になっている点がある。宿題に含めた適語補充問題の課題を積極的に行わなかった一部の学生も,期末試験の前には「学生ID」による教師のモニタリングを意識して,提出は遅れたもののすべての課題を試験前に完了させている。このように,「ログ記録機能」は小さな改良ではあるが,学習者の宿題のさぼりの抑止力になることが判明した。今年度の授業終了後に,ログの分析を行って,次期開発の改良点のデータとする予定である。以上のように,「学生ID」を付けたことに対応して,授業および家庭学習での適語補充問題の使用頻度が上昇した。具体的には,後期の期間中で1人当たり最低42回,適語補充問題に取り組んだ。授業中の学習の最後に,まとめとして,当該授業の学習文法項目,例えば「動名詞」や「現在分詞の後置修飾」などの1セット8問の適語補充問題を実施した際,学習者たちは集中して真剣に取り組んでいた。なお,適語補充問題は,教師が学習者全体に解答について解説をすることができる「今日の問題(クラス全員が同じ出題)」と,学習者が個別に繰り返し取り組むことのできる「ランダムに出題(パソコンによってあるいはアクセス毎に出題が異なる)」という2つの形式がある。後期の中盤の11月初めに学習者に適語補充問題の感想を1文ずつ自由に書いてもらった結果の一部を表5に示した。感想の多くは,「復習に役立つ」,「理解できていない部分がよくわかる」,「スペルミスが多いことを自覚した」,「繰り返し解くことが必要だと思った」など,前向きなものであった。適語補充問題は英語学習への能動的な参加を促し,リメディアルレベルの学習者のニーズに合致していると考えられる。適語補充問題について学習者のフィードバックを得るため,1月下旬の授業終了時に1つのクラスの参加者43名に質問紙調査を実施した。学習者は質問項目に対して,「強くそう思う⑸」から「全くそう思わない⑴」の5段階評価を行った。5段階評価の平均値とSDを表6に示した。結果,アクセサビリティ(項目1),直感的操作(項目2),デザイン(項目3),有用性(項目4),学習の楽しさ(項目5)のいずれの項目も適切だという評価が得られた。4.携帯端末専用検索ツールm-SCoREの開発SCoREはパソコンでないと利用しづらく,「スマホでSCoREを使いたい」,「スマホで使えなくてがっかりした」,「電車の中で宿題をしたいのにスマホではSCoREを使えない」など,スマートフォンでのSCoRE利用に関する学習者の要望が多く寄せられていた。第4次開発では,これらの要望に応えて,携帯用端末専用検索ツールm-SCoREの開発を行った。図4はスマートフォンでのm-SCoREの画面,図5はタブレットでのm-SCoREの画面を示す。なお,m-SCoREという名称はmobile-表5 適語補充問題の感想・ 簡単に今まで習った授業のことを学べる・ ジャンルごとに出題できてやりやすい・ 思ったよりスペルミスが多かった・ まちがっている部分をしっかり指摘してくれるので力がつく・ まだ理解していないことがあったので,勉強すべきだと感じた・ 毎回やることで向上心が上がると思う・ 理解できていない部分がわかったので,克服したい・ 思っていたよりも理解できていなかった・ 繰り返し解き直すのが必要だと思った・ 問題がしぼられていて関連していたので易しかった・ 動詞の形など基本的なことが学べて力になったのでこれからも利用したい表6 適語補充問題について学習者のフィードバック質問項目平均値標準偏差1簡単にアクセスできた4.50.72直感的に操作できた4.20.73ソフト画面のデザイン4.30.84英語学習の役に立つ4.20.95適語補充問題は楽しい3.80.9
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