日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第58巻第1号
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5.まとめ参考文献─ 6 ─フライホイールと電動発電機の両軸を直結した装置よりも両軸を遊星歯車機構で連結した装置の方が全機械損失を約10%低減可能であることがわかった。これより,電動発電機の回転速度を低く抑え,フライホイールの回転速度は高速化が適しているといえる。電動発電機の回転速度を低く抑えるには,フライホイールと電動発電機の軸をギア比の異なる歯車を用いれば可能である。しかし,フライホイールと電動発電機の両軸を同心軸にできないため装置が大型化してしまう。また,フライホイールの回転速度にその都度設計しなければならない。遊星歯車機構であればそれぞれの軸の同心軸化,電動発電機の回転速度の低速化,装置のコンパクト化が可能である。前述したように遊星歯車機構は大半のオートマチック車の駆動装置やトヨタのハイブリッド車に搭載されていることから既存の製品の使用が可能である点にメリットがある。さらに,フライホイールと電動発電機の回転速度は切り離して考えることが可能なため,フライホイールの回転速度を高速化しても遊星歯車機構の定数を設計変更すれば電動発電機の回転速度は依然として低速を維持することができる。今後は損失の大部分を占める風損低減には付帯設備が大型化する真空よりも分子量・気体密度の観点からHeガスを適用し実験検証する予定である。1) 高木邦子:需要家の脱炭素,新興企業が担う-再生可能エネルギーを使いやすく,蓄電池に脚光.日経ESG,2024年/4号(2024),pp16-172) 松川誠:「核融合炉システムにおけるパワーフロー」,プラズマ・核融合学会誌,Vol80, No.7(2004),pp 559-5623) 嶋田隆一:「原動機のない発電機」,電気学会 誌,123巻,5号,pp 275-277(2003)4) H. Chikaraishi, M. Arimitsu, Y. Wang, S.Uemura, R. Shimada: “Fast Re-sponse Power Stabilizer using the AC-Excited Flywheel Generator”, IEEJ Trans. IA, Vol. 113-D, No. 11, pp1254-1261(1993)(in Japanese)5)島津・橘:「京浜急行電鉄(株)納め電車線用フライホイール発電電動機」,三菱電機技法,63,8,p.60(1989)6)M. Murayama : “Design and Implementation of DC Pulsed Power Supply Employing Self-Excited Induction Generation and Flywheels for Toroidal Field Coils of a Tokamak Device, PLATO”, IEEE Trans. on AS, Vol. 30, No.4(2020)7)加藤,他:「フライホイール誘導発電機による瞬低保護装置とエンジン発電機併設によるUPS」,電学論D127巻,8号,pp.844-850(2007)8)加藤:「フライホイール電動発電機の各種電源への応用」,電気学会産業応用部門半導体電力変換/自動車合同研究会,2022年12月9)加藤,他:「遊星歯車機構を備えたフライホイール電動発電機のリングギア回転速度制御による充放電装置」,電気学会全国大会,4-180(2023)10)野崎博路:「新世代の自動車のしくみ」,マイナビ出版,ISBN : 4839978816(2022)11) Ajisman, “A Study of Loss Reduction of Flywheel Energy Storage System”,東京工業大学博士論文,2001.(R 6.6.17受理)

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