日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第58巻第1号
4/34

2.提案装置Fig. 1 Charging and discharging system with flywheel motor generator.Fig. 2 Charging and discharging system with flywheel and planetary gear.Fig. 3 External appearance of the planetary gear mecha-nism used in the experiment.─ 2 ─電動発電機を組み合わせた電力充放電システムを提案する。フライホイールとは電気エネルギを運動エネルギとして貯蔵,その逆の発電もできる円盤型の回転体である。フライホイール装置による電力応用は電鉄,鉄鋼,核融合など短時間に大電力を扱う分野で古くから利用されている3)~6)。フライホイールはバッテリと比較すると半永久的な寿命,外気温による耐環境性が高い,リサイクル可能など様々な優位性がある。筆者らはこれまでにフライホイールを使用し10kW級の停電対策装置や再生可能エネルギの平滑化システムを実証してきた7,8)。本稿では常時回転しているフライホイールのアイドリング損失のうち機械損失の低減について実験検証を行ったので報告する。2.1 直結型フライホイール充放電システム提案するシステム構成では再生可能エネルギの余剰電力を電動発電機に貯蔵し,電動発電機でフライホイールを加速させ,再生可能エネルギの発電出力が低下した際にフライホイールの機械的な回転運動エネルギを取り出して平滑化する。システム構成の一つとして,Fig. 1の方式ではフライホイールと電動発電機によって構成されており,それぞれの軸が直結されている。充放電に伴いフライホイール回転速度の変動により電動発電機の回転速度も変動する。よって,発電周波数や電圧を一定に保つべく,バッテリ式と同様に装置と電力系統間にパワー半導体による巨大な電力変換器を設ける必要がある。2.2 遊星歯車機構搭載フライホイール充放電システム2.2.1 システムの概要もう一つの方式として筆者らが提案している遊星歯車機構を搭載した方式をFig. 2に示す9)。この方式ではフライホイール,電動発電機,制御モータ,遊星歯車機構によって構成されている。遊星歯車機構とは中央の歯車,サン(太陽)の周りをキャリアが惑星のように自転しながら公転する機構である。遊星歯車機構の外観をFig. 3に示す。実際の太陽と同じようにサンも自転する。遊星歯車機構はサン,キャリア,リングの3軸のうちリングを固定してキャリアに対してサンを増速機(またはサンに対してキャリアを減速機)として使用することが多い。自動車ではほぼすべてのオートマチック車,トヨタのハイブリッド車に使用されている。オートマチック車では複数個の遊星歯車機構のリングを順々にロックさせながら多段変速している10)。本構成ではリングも回転させる。リング回転数は制御モータを使用して制御する。Fig. 3に示すように遊星歯車機構のリングにはキャリアの内周歯とは別に外周にも平歯車が設けられている。この外周の歯と制御モータの歯が噛み合うことにより,リング回転速度は制御モータによる制御が可能である。リング回転速度を制御することで電動発電機の回転速度を一定に維持することができる。遊星歯車機構は増速ギア比を無段階で可変できるため,サンに接続しているフライホイール回転速度の低下に伴い増速機としてのギア比が徐々に小さくなれば,キャリアに接続し

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る