日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第58巻第1号
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参考文献8.おわりにTable 14 Peak Value of S-7─ 24 ─材質や形状が異なる10種類の風鈴に対してシミュレーションによるモード解析を行ったが,いずれも一般的な許容範囲である実測値との誤差10%程度以内に収めることができた。一部を除き,風鈴の音は基本周波数と2.6倍音前後のピーク値が大きな値を示し,ほとんどの風鈴がいずれも「うなり」が生じている。基本周波数における「うなり」の対となるピーク値では,一方の振動形状は,風鈴の下部が縦と横に交互に伸び縮みする挙動を示し,他方のそれは,前者のそれを45度傾けたものになっており,約2.6倍音前後における「うなり」の対となるピーク値では,一方の振動は風鈴の下部が外側に膨らむ点が3か所できる形状を描く挙動を示し,他方のそれは,前者のそれを30度傾けたものになっている。また,上記2つよりはレベルは小さいが,約4倍音から5倍音前後における「うなり」の対となるピーク値では,一方の振動は風鈴の下部が外側に膨らむ点が4か所できる形状を描く挙動を示し,他方のそれは,前者のそれを22.5度傾けたものとなっている。そして,レベルはとても小さいが,超音波を含めた5倍音前後より高い高次倍音では,風鈴の上部と下部が連動して振動することがわかった。さらに,鋳鉄は他の材料と比較してヤング率が大きいため,超音波が確認されたことも明らかにした。注)文献9)では,二つの純音の周波数差が20Hz以下であるときを「うなり」と呼び,20Hz以上で臨界帯域幅(臨界帯域幅を超えると2音が分離して聴こえる)までのものを「粗さ(roughness)」と呼んでいるが,本論ではいずれも「うなり」としている。【謝辞】本研究の一部は,JSPS 科研費 JP21H00485 (基盤研究(B),研究代表者:塩川博義,課題名:音響解析を用いた金属製打楽器の変遷―「うなり」の文化としての東洋音楽史―,令和3年度~令和7年度)を受けて行われた。1) 土田義郎:風鈴の音色に関する研究 各種風鈴の音響特性と心理的評価の関係について,日本音響学会講演論文集,(2023),1521-15242) 土田義郎:風鈴の音色に関する研究 鳴動パターンを統一した心理的評価,日本音響学会講演論文集,(2024),1413-14163) 塩川博義:風鈴の音響解析および音印象評価に関する研究,日本サウンドスケープ協会2021年度春季研究発表会論文集,(2021),1-54) 高尾美穂,塩川博義:現代における風鈴の音印象に関する研究,日本サウンドスケープ協会,2022年度春季研究発表会論文集,(2022),1-105) 高尾美穂,塩川博義:風鈴の音に対する印象評価の因子分析に関する研究,日本サウンドスケープ協会,2023年度春季研究発表会論文集,(2023),10-196) 塩川博義,高尾美穂:風鈴の「響き」と「うなり」について-風鈴の音に対する日本人の感性に関する研究-,日本大学生産工学部研究報告A 第57巻第2号,(2024),1-127) 森田一真,松橋彩花,永井仁史,藤岡豊太,阿部正人,田中隆充,平塚貞人,堀江晧,鈴木幸一:南部風鈴の振動解析に関する検討,計測自動制御学会東北支部第280回研究集会,(2013),280-5,1-68) 塩川博義:“梵鐘におけるうなりの発生性状に関する研究-真栄寺の梵鐘を例にして-”,サウンドスケープ19巻,(2019),p.73-759) Diana Deutsch:『音楽の心理学(上)』,西村書店,(1987),17-20(R 7.2.10受理)

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