A Study on Characteristics of Generated Sound for Wind BellsKeywords:Wind Bell, Modal Analysis, Frequency Characteristics, Interference Beat, Ultrasonic日本の伝統的な住宅では,木や紙が使われているため,内と外の音が行き来しやすく,共存している。しかし近年では密閉性の高いコンクリートやサッシが用いられるようになり,内外の音が分離しているのが現状である。また,環境共生住宅の重要性が近年問われているが,風鈴を縁側に吊るし涼しさや静けさを感じることは日本の伝統住宅における環境共生の文化である。本研究は日本における住宅の音環境づくりを考えることを目的として,風鈴の音色の音響的構造を分析する。近年,風鈴の音に関する研究が増えている。土田は数多くの風鈴を用いて,その音響特性と心理的評価との関係について検討している1),2)。著者も,数年前から,風鈴の物理的な音響分析だけでなく,心理的評価研究を行っている3)-6)。既報6)では,「風鈴の音」の「響き」と「うなり」の関係を心理的および物理的評価実験から分析し資 料3.実験の目的Hiroyoshi SHIOKAWA*, Jun TOYOTANI* and Kazuto NAKAGAWA**, Soutaro NAKAZAWA***1.はじめに2.研究の背景塩川博義*,豊谷 純*,中川一人**,中澤宗太郎***日本大学生産工学部研究報告A2025年 6 月 第 58 巻 第 1 号─ 9 ─て,日本人の感性では,「うなり」は風鈴の音を評価するうえで重要な要素であることを明らかにした。しかし,単体の風鈴から「うなり」がどのようにして発音されているかはほとんど明らかにされていない。森田らは有限要素法の固有振動解析とレーザードップラ振動計を用いて振動解析を行い,南部風鈴における「うなり」の発音性状について分析している7)。これはさまざまな材料で制作されている風鈴の中で鋳鉄製の風鈴ひとつを分析したものである。著者も風鈴と形状が同じ梵鐘の発音性状を有限要素法の固有振動解析で分析している8)が,これはサイズや厚さも大きく異なり,基本周波数も低い。本報ではガラス製風鈴2種,陶磁器製風鈴2種,金属製風鈴6種類の3Dモデルを用いてコンピュータ・シミュレーションにより音響解析を行い,実測値と比較検討し,「うなり」や超音波に着目して風鈴の発音性状の特徴を分析したので,その結果を報告する。 *日本大学生産工学部教授 **日本大学生産工学部専任講師***日本大学大学院風鈴の発音性状に関する研究
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