参考文献─ 11 ─全体的に好印象である。これらのことから,日本人の感性では,「うなり」も風鈴の音を評価するうえで重要な要素になると考えられる。風鈴の音を聴いて「涼しい」と感じるのは世代によって異なり,若い世代があまり涼しさを感じていない傾向が見られた。これは地球温暖化により夏は窓を閉め切ってエアコンで過ごすことが多くなり,窓を開けて風鈴の音を楽しむ習慣自体が少なくなっている生活環境の変化が影響しているものと考えられるが,さらに詳細な実験が必要である。今後の検討課題としたい。注) 文献8)では,二つの純音の周波数差が20Hz以下であるときを「うなり」と呼び,20Hz以上で臨界帯域幅(臨界帯域幅を超えると2音が分離して聴こえる)までのものを「粗さ(roughness)」と呼んでいるが,本論ではいずれも「うなり」としている。【謝辞】本研究の一部は,JSPS科研費JP21H00485(基盤研究(B),研究代表者:塩川博義,課題名:音響解析を用いた金属製打楽器の変遷─「うなり」の文化としての東洋音楽史─,令和3年度〜令和7年度)を受けて行われた。本報をまとめるにあたり,実験に協力していただいた被験者の方々の労を多とした。ここに記して深謝する。1) 森田一真,松橋彩花,永井仁史,藤岡豊太,阿部正人,田中隆充,平塚貞人,堀江晧,鈴木幸一:南部風鈴の振動解析に関する検討,計測自動制御学会東北支部第280回研究集会,280-5,(2013),1-62) 土田義郎:風鈴の音色に関する研究 各種風鈴の音響特性と心理的評価の関係について,日本音響学会講演論文集,(2023),1521-15243) 土田義郎:風鈴の音色に関する研究 鳴動パターンを統一した心理的評価,日本音響学会講演論文集,(2024),1413-14164) 塩川博義:風鈴の音響解析および音印象評価に関する研究,日本サウンドスケープ協会2021年度春季研究発表会論文集,(2021),1-55) 高尾美穂,塩川博義:現代における風鈴の音印象に関する研究,日本サウンドスケープ協会,2022年度春季研究発表会論文集,(2022),1-106) 高尾美穂,塩川博義:風鈴の音に対する印象評価の因子分析に関する研究,日本サウンドスケープ協会,2023年度春季研究発表会論文集,(2023),10-197) 境久峰,中川剛:『聴覚と音響心理』,コロナ社,(1995),199-2098) Diana Deutsch:『音楽の心理学(上)』,西村書店,(1990),17-20
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