*日本大学生産工学部環境安全工学科教授─ 35 ─日本大学生産工学部研究報告A2023年 6 月 第 56 巻 第 1 号Keywords: Laser ignition, Multi-point ignition, Lean combustion, Internal combustion engine, Knocking資 料1.序論Eiichi TAKAHASHI*髙橋栄一*A study on the effect of multi-point laser target ignition on combustion in an engine-like パルスレーザーを凸レンズ等を用いて集光し,ブレイクダウンプラズマの形成を通じて可燃性予混合気を点火するレーザー点火は従来のスパークプラグに替わる新しい点火方法として注目されている1)。レーザー点火には従来のスパークプラグでの放電が困難になるような高圧力状態での点火が可能である特徴に加え,電極を有しないため長時間の運転に伴う電極の損耗が無く発電用エンジンなどへの適用ではメンテナンス期間を長くできるなどの利点がある 2),3)。さらに近年,モノシリック構造を有するマイクロチップレーザーの開発により点火に必要な安定性,堅牢性も十分なものとなっている4)。一方,エンジンの熱効率を高めるための希薄燃焼では火炎伝播速度が低下することが課題となる。レーザー光を分割して同時多点点火を実現すれば,火炎面積を増やすことによって実質的な燃焼速度を増大させることが可能である。さらに燃焼期間を短縮することができれば,等容度の改善による熱効率の向上だけで無く,エンドガスの自着火に伴う圧力振動を形成するノッキングも抑制できることが期待される。environmentこれまでレーザーによる多点点火実験を行った研究はいくつか報告されている5),6)。しかし,レーザーブレイクダウンプラズマの形成に必要な最低強度の制約から基本的には数点に留まっている。一方,気体中にレーザー光を集光してブレイクダウンプラズマを形成するのに必要なパルスエネルギーに比べて,固体表面にレーザー光を集光すると非常に小さいパルスエネルギーでもプラズマを形成できることが知られている7),8)。しかし,その点火メカニズムは良くわかっていなかった。著者は定容容器中に設置された固体ターゲットに対してレーザーを照射する実験を実施し,点火の成否がターゲット材質のアブレーションしきい値に強く依存していることを明らかにするとともに,ブレイクダウンプラズマの形成する強力な渦流動が失火をもたらしていることを合わせて示した9)。そこで本報では,このレーザーと固体表面の相互作用に基づく点火法であるレーザーターゲット点火法に基づき,レーザー多点点火実現するレーザー光分割法,およびエンジン類似環境を実現する急速圧縮膨張装置の燃焼室筒内において同点火法を適用し,燃焼期間,およびノッキング強度への影響を評価したので報告する。エンジン類似環境における多点レーザーターゲット点火の 燃焼に対する効果に関する研究
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