日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第56巻第1号
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モデリングペーストで補正するとともに,着彩後,座台座部分モデルと銅像部分モデルを接着した。NCルータを用いて削り出した台座底面部材にはフェルトを張り付け後,台座部分底部に接着した。7.2 着彩銅像部分モデルについては,下地2の上に,凹凸の深みを出すための黒,素材の銅,銅が錆びた緑青の順でアクリル系塗料を塗り込み,仕上げとし,渋沢栄一像現物の建立当初の彩色を想定し,再現した。台座部分モデルは,下地2の上に彩度を下げた山吹色を塗り込み,黒,白,焦茶を用いた複数の色で小さめのスパッタリング処理注2)を行い,花崗岩仕上げとした。着彩後,銅像部分モデルと台座部分モデル,台座底面部材を接着した完成品をFig. 11に示す。3D3Dプリントアウトモデル(銅像部分モデル,台座部分モデル)対し,まず,3Dプリントアウトモデルに対する塗料の密着度を高めるための下地1:金属・ガラス用プライマー,発色を良くするための下地2:ジェッソを塗り込んだ。─ 25 ─プリントアウトによる一部欠損部分も修復され,着債もうまく付着し,実物と比較しても遜色ないレプリカとなった。正面図,側面図の写真撮影をもとにした3Dモデリングも全体として問題がないことが判明した。一方,顔の表情において出力モデルと実物の若干の相違も認められる。顔部分だけでも,プロトタイプモデルを出力し,3Dモデルに修正を加えるというプロセスを何度か行う必要があると考える。今回はスケジュール上できなかったが,むしろこのことがデジタルファブリケーションを活用する大きなメリットであろう。また,今回は写真撮影がベースであり,点群測量は補助的な活用に留まったが,足場やドローンを活用した上部の銅像部分の点群測量の実施も今後の興味深い課題である。顔の表情は非常に繊細な問題であり,点群データ利用による改善の可能性は低いと考えられるが,作業時間の短縮が見込める。以上この報告では,デジタルファブリケーションを用いた子爵渋沢栄一像の1/15スケールモデル作成についてまとめた。写真撮影を基に3Dモデリングしたものを3Dプリントアウト,加工・着彩した。渋沢栄一に関連する医療施設の記念式典の贈答品として,東京都板橋区の文化財となっている渋沢栄一像を顕彰するためのレプリカモデルの作成依頼であったが,デジタルファブリケーションの活用によって短期間に実現することができた。デジタルFig. 10 Painting in verdigris.Fig. 11 Replica of Eiichi SHIBUSAWA - bronze statue.8.考察と課題まとめ

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