日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第56巻第1号
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  *日本大学生産工学部創生デザイン学科 教授 **日本大学生産工学部創生デザイン学科 専任講師***日本大学生産工学部創生デザイン学科 学部生─ 21 ─の人物像制作には,一般に多額の費用がかかり,そのレプリカ制作であっても,未だ気軽に利用できるものではない。本報告では,マニュアルモデリング用の写真撮影と簡易的な点群測量を用いることによって,子爵渋沢栄一像の測量,3Dモデリング,3Dプリンタ出力,加工,着彩についての一連の過程及びその課題について論じた。現在,東京都板橋区の東京都健康長寿医療センター公園に立地している子爵渋沢栄一像(Fig. 1)は,渋沢栄一が50年間院長を務めた旧養育院本院の板橋移転を記念し,大正14年に建立されたもので,平成25年に現在地(Fig. 2)に移転された。当地の渋沢栄一像は彫刻家の小倉右一郎の制作で,花崗岩の台座に,重さ1.8トンの青銅製となっている。東京都板橋区では,現在の東京都健康長寿医療センターの前身であり,日本の福祉・医療の原点である「養育院」の院長であった渋沢栄一を顕彰し,当地に立地する銅像を板橋区登録有形文化財に指定している2)。日本大学生産工学部研究報告A2023年 6 月 第 56 巻 第 1 号Keywords: 3DModeling, 3D Printer, Point Cloud Data, Academia-government Collaboration研究ノート1.はじめに2.子爵渋沢栄一像A Study on Production of Viscount Eiichi SHIBUSAWA - Bronze Statue Model Kiminori NAKAZAWA*, Tetsuhito KINOSHITA**, Kazuto NAKAGAWA** and Kaori NAMIKI***この報告は,子爵渋沢栄一像(東京都板橋区登録有形文化財)の1/15スケールモデル作成についてまとめたものである。次の一万円札の図柄となることが決定している渋沢栄一像の一つが,東京都板橋区の東京都健康長寿医療センター公園内に立地している。この度,本学部と連携協定を締結している東京都板橋区の産業経済部くらしと観光課より,旧養育院150周年記念行事(令和5年2月9日挙行)注1)での贈呈記念品として3Dプリンタを用いた渋沢栄一像レプリカモデルの制作依頼があった。ものづくり企業や教育機関を中心として,3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタル工作機器を使用した工作技術:デジタルファブリケーションの活用が進んでいる1)。一度3Dデジタルモデルを構築することができれば,3Dプリンタ等によって手軽に実態化できるため,工業製品や空間のプロトタイプだけでなく,本報告で扱うような人物像の制作にも活用が及んでいる。しかし,3Dスキャナ,3Dプリンタ等を活用した商用Using Digital Fabricationデジタルファブリケーションを用いた 子爵渋沢栄一像モデルの制作中澤公伯*,木下哲人**,中川一人**,並木かおり***

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