日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第56巻第1号
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)tinu oN)tinu oN( )noitazilamron erofeB(ecnabrosbA( )noitazilamron retfa(ecnabrosbA084625366146422688260616230669064095869567750485217548558465060502556994868423940474408467648454216402444844653482242924001446145432100Fig. 2では波形Bと波形Cはほとんど重なって見えるが,波形Bの元データを標準偏差で基準化したものはFig. 3のようになり,Table 5に示したように距離Dで11〜19倍(平均で14.4倍)異なることが示された。またFig. 3では基準化の有無でパターンが異なって描写され,Table 3とTable 5で比較をすると,基準化をしないでパターンの差をダイレクトに距離Dで見る場合と比べて,倍率では若干異なることが示された。ただしTable 5(基準化したもの)について式(17)の望大特性のSN比ηlを用いて求めると22.8(db)となり,Table 3(基準化しない場合)のSN比ηlの23.0(db)から見て両者の差は0.2(db)で,基準化の有無による差はそれほど見られない。今回用いたデータでは基準化の有無の相関係数が0.95で,またパターン距離Dの値に対する基準化の有無の依存は確認されなかったが,一般論としてパターン距離Dの大きさが項目の最大値に依存する傾向があることは十分に考えられるため,実際の解析ではデータの桁数に注意を払うのが良いと思われる。ただし基準化をすることで,Fig. 3のように原パターン本来の姿が大きく崩れるという問題がある。RT法では多数の項目データ(ここでは500項目を使用)を,感度βをY1,ばらつきとしてSN比ηをY2の2項目に圧縮をするため,直接的に使用しない項目間の相関等の情報が失われる可能性がある。ただし線形式Lで平均値m1,m2,〜,mkと対象データの項目x1,x2,〜,xkとの積和を求めており,項目間の相関ではなく,パターン差の情報として500項目すべてを使用している。また線形式Lの値はm1,m2,〜,mkとx1,x2,〜,xkとの偏差を反映し,─ 17 ─その差が大きくなるほどLの値は大きくなる性質があるが,これはk項目の差分情報を利用していることになり,パターン差がダイレクトに反映する。なお多次元情報をY1とY2の2項目に整理する理由として,転写性(元の情報を対象に反映させる機能)の利用が考えられる。転写性の考え方を利用したSN比は,元情報である単位空間データの平均値m1,m2,〜,mkを用いて標準化をし,転写後の対象のデータであるk項目のデータx1,x2,〜,xkを感度β (Y1)とSN比η(Y2)で表し,感度βが1に近いほど基準と対象の間に1:1の対応性があり,またSN比ηが高いほどばらつきが少ないので,結果的に1:1の対応性が高いことになる。換言すれば,基準と対象のパターン差の評価を,ばらつきの面から差の大きさの多寡で行っていることと同義である。なお,2乗和の分解すなわち分散分析を利用すると,全データを2乗すると平均の効果の2乗とばらつきの効果(分散)に分けることができることから,それらを代表的な統計量としてY1,Y2に適用したとも考えることができる。7.2 パターン差の評価と課題製造業における品質管理では,簡易的で精度が高く,良品は良品,不良品は不良品と確実に識別が可能な方法が望まれる。近赤外分光分析法は,量的・質的分析のために顆粒製剤でしばしば実施される液体クロマトグラフィーなどと異なり非破壊であり,また分析ばらつきが少なく再現性が高いが,出力される波形は画像データであるため,視覚による場合は定性的な判断になりがちである。そこで,ある吸収波長における吸光度をデータとして,それらの500項目分のデータを用いた解析を行い,2項目に縮約をした方法で距離Dとして差異を求めたのが今回検討した内容である。また2者の識別でも,どちらを基準に置くかで識別性に若干の違いが出る場合があることを6.2で示した。またFig. 1やFig. 2のような波形パターンにおけるパターン差の利用について考えたい。パターンは技術的な定義としてはあいまいな部分があるが,規範とする型や規則性を意味することが多いと思われる。よってパターン認識やパターン分析は,それらの規範や定型にどれだけ則るかや合致するかの判断を行う手続きと考える。ここではパターンを形成する原情報と対象との差,すなわちパターン差をパターン認識の考え方の論拠としているが,Fig. 1や1601208040-40-80-120-160After normalizationWavenumber(cm-1)Before normalization-1-2-3-4-5Fig. 3  NIR waveform of granule formulation B before and after normalization7.1 転写機能の利用7.考察

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