日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第55巻第2号
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q・PPaこのことから,P/Pa=2近傍におけるTj,1/Taの低下はノズル出口部の流れがチョーク流れに遷移したことによると考えられる。噴流が等エントロピー膨張をした場値はシックネスゲージを利用して確認した。伝熱面として用いた銅ブロックには2本の接触型シース熱電対(K型)を10mm間隔で挿入し,熱流束を算出するための温度勾配を測定した。本研究では,熱電対の設置位置を伝熱面から7mm離れた位置とした。通常,噴流が衝突する伝熱面上の熱伝達率及び温度は円周状の分布をもつことが知られており2),伝熱面近傍における銅ブロック断面(ノズル軸に垂直方向)には温度分布が存在すると考えられる。一方で,伝熱面から離れた位置では,側面が断熱された定常状態において断面の温度が一定となると考えられる。なお,汎用熱流体解析ソフトSTAR-CCM+Ⓡを用いて断面温度が一定となることを確認している。すなわち,本研究で取得した温度勾配は伝熱面全体の温度分布を考慮した値である。2.2 噴流温度の計測方法噴流の膨張による伝熱性能への影響を検討するために膨張前後の噴流温度Tj,1およびTj,2の計測を行った。測定時における空気供給系にはFig. 2に示した実験装置を用いており,ノズル上流部における空気初期温度Taを20±0.5℃とした。膨張前の噴流温度Tj,1の測定では,ノズル直下の伝熱面上に線径φ76μmのT型熱電対を設置して伝熱面に衝突する直前の噴流温度を測定した(Fig. 4)。なお,熱電対の固定にはテープを用いており,噴流の衝突によって測定接点が移動しないことを確認している。さらに,噴流の衝突部に熱伝導率の低いエポキシ樹脂を用いることで,衝突面での熱漏洩を防止した。膨張後の噴流温度Tj,2は,Fig. 3に示す実験系を用いてセラミックヒータ出力0の状態で計測を行った。このとき,銅ブロックは断熱材で覆われており,熱の移動は噴流の衝突による熱伝達のみとなる。すなわち,銅ブロック内部の温度勾配が0(T1=T2)となった時の温度が伝熱面上における膨張後噴流温度の平均値であり,これをTj,2とした。2.3 熱伝達率の計測方法伝熱特性に対する噴流の断熱膨張による影響を求めるため,Fig. 2に示した実験装置を用いて伝熱面上の平均Fig. 4  Experimental apparatus for the underexpanded jet temperature measurement.熱伝達率h−を取得した。伝熱面上のは以下の式で表される。h−=  ………………………………………⑴⑴式において,q・は熱流束,Tsは伝熱面温度,Tjは噴流温度である(前述のTj,1またはTj,2)。q・は一次元の熱伝導を仮定し,銅ブロック内の計測温度を用いて以下の式から算出した。なお,測定時におけるq・は約50kW・m−2である。q・=λ(Ts−Tj)⑵式におけるΔT及びΔLは,銅ブロックに挿入された熱電対で計測した2点間の温度差(T2−T1)及び2点間距離(L2−L1)である。λは銅の熱伝導率である。本研究における銅ブロック温度は約30℃~86℃であり,λの変化は1%未満であるため391W・m−1・K −1で一定とした。また,伝熱面表面温度Tsは以下の式を用いて算出した。ΔTΔL⑶式におけるL1は伝熱面と熱電対間の距離であり,T1は伝熱面側の熱電対で計測した温度である(Fig. 2,Fig. 3)。⑵式及び⑶式から算出した値は伝熱面上における平均値であり,各値を⑴式に適用することで伝熱面上における平均熱伝達率を算出した。このとき,噴流温度に実験値Tj,1及びTj,2を用いることで,噴流の膨張による影響を求めた。なお,実験ではセラミックヒータ加熱開始と同時に空気流量を調整し,空気流量及び各点温度が安定した定常状態での供給側圧力および温度計測を実施した。3.1 噴流温度測定結果噴流温度の評価には,初期空気温度に対する温度比(Tj/Ta)を用いた。Fig. 5にノズル圧力比(P/Pa)に対する膨張前の噴流温度比Tj,1/Taの関係を示す。なお,Tj,1/Taの算出にはセルシウス温度を用いている。Fig. 5より,P/Pa=2近傍でH/dに依らずTj,1/Taが大きく減少している結果が得られた。ノズル出口部の流れを等エントロピー流れとして考えると,P/Paとマッハ数Mの関係は以下の式で表され,P/Pa=1.89(γ=1.4)においてノズル流れがチョーク流れ(M=1)となる。 =(1+─ 3 ─Ts=−2T2−T1L2−L1γ−1 ……………………………⑷ ……………………………⑵ =λΔTΔL L1+T1 …………………………………⑶ M 2)γγ−13.実験結果及び考察

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