日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第55巻第2号
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2.1 実験装置概要Fig. 2に本研究に用いた実験装置概要を示す。熱媒体として用いる空気は2基のコンプレッサーによってタンク内に圧縮し貯蔵した。なお,実験時における室内の相対湿度は50−60%とした。空気流量の調整は体積流量計(大気圧換算)を用いて実施した。空気供給系のノズル上流側には接触型シース熱電対(K型)及び圧力センサを設置し,空気の初期温度及び供給側圧力を計測した。ノズル及び伝熱面の材料には銅を用いており,ノズルは内径2mmの単孔円筒ノズル,伝熱面寸法は1辺が10mmの正方形である。銅ブロック下部にはセラミックヒータを設置しており,熱伝達率測定時には定電圧電源を用いて銅ブロックを加熱した。また,実験系外部との熱交換については,銅ブロック及びセラミックヒータ周囲に厚さ3mmの断熱材を敷設することで抑制した。Fig. 3にノズル及び伝熱面に用いた銅ブロックの寸法を示す。ノズル先端と伝熱面間の距離Hは無次元距離H/dが0.5,1.0となるように決定した。この時,HのFig. 2 Schematic of the experimental set up.Fig. 3  Experimental apparatus for the heat transfer measurement.─ 2 ─験結果を纏め,ノズル設計について検討を行っている。社河内ら4)は,ノズル内部に切欠きを行うことで噴流の乱れを増加させ,伝熱性能を向上させることが可能であることを報告している。伝熱性能については,特に伝熱面上における局所的な圧力及び熱伝達率等の分布を取得する研究が多く行われている2)−8)。Fig. 1に本研究で想定する衝突噴流装置の概略図を示す。一般的に伝熱面上における局所熱伝達率は,ノズル軸上から伝熱面水平方向に離れると低下し,ノズル直下近傍で最大となる。特に,衝突距離が短い場合(H/d≦0.2)にその傾向が顕著であることが報告されている 12)。ノズル内部と外気との圧力比(P/Pa)の影響については,P/Paの増大に伴って熱伝達率が向上していることが報告されている5)。Rahimiら5)はノズル出口流速が音速となるチョーク条件を満たした不足膨張噴流における伝熱面上の表面温度分布及び局所熱伝達率の分布を実験的に取得し,高レイノルズ数領域(Re>105)におけるよどみ点のヌセルト数(Nu)を予測するためには,P/Paを考慮する必要があると報告している。また,ノズル伝熱面間の距離Hの影響については,無次元距離であるH/dを用いた評価が行われており,H/dが小さいほど伝熱性能が向上することが明らかとなっている5)。しかし,多くの研究はH/d>2.0で実施されており,H/d≦1.0の狭小空間における研究報告は少ない。上述より,衝突噴流空冷に関する研究では噴流の流体力学的特性を考慮した設計改善や伝熱面上における状態量や特性値の把握が主として行われてきた。一方で,H/d≦1.0の狭小空間における伝熱特性および不足膨張噴流の伝熱面上における断熱膨張が伝熱特性に及ぼす影響は十分に検討されていない。以上より本研究では,H/d≦1.0となる狭小空間での不足膨張噴流による伝熱特性として伝熱面上における定常・等熱流束条件下での平均熱伝達率を実験的に求めた。また,膨張前後の噴流温度を実験的に求め,それぞれの温度を適用して算出した平均熱伝達率を比較することで伝熱特性に対する噴流の膨張による影響を調べた。Fig. 1  Schematic of impingement jet cooling system.2.実験装置及び方法

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