Fig. 1 A Set of Vietnamese Gongs *日本大学生産工学部建築工学科教授 **日本大学生産工学部創生デザイン学科専任講師***京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科特任助教東アジアおよび東南アジアには,銅鑼(ゴング),梵鐘,双盤(鉦),風鈴などの金属製打楽器が広く分布している。これらは主に,青銅,黄銅(真鍮),鉄などを材料として作られており,日常生活における合図あるいは時報としてだけでなく,宗教的儀礼や舞踊における伴奏音楽など様々な用途に使用されている。これら金属製打楽器の製造方法は,大きく鋳造および鍛造の二つに分けられる。鋳造は溶かした金属を鋳型に入れて製作するもので,梵鐘や鉦,そして,風鈴などがこの方法で作られる。これに対して,鍛造は金属の塊を高温に熱しながら,ハンマーで叩いて形状を整えて製作していく。また,近年では金属の板を常温のまま叩いて形状を整えて製作していく板金という方法も用いられているが,材料は主に真鍮板か鋼板が用いられる。東南アジアの音楽などで用いられるゴングは,主に鍛造あるいは板金の方法で作られる(ベトナムには鋳造で作られる銅鑼もある1))。鍛造で造られた青銅製の銅鑼と板金で造られた黄銅製の銅鑼はいずれもハンマーで叩きながら形状を整えていくので,外観だけではなかなか判別がつきにくい。そこで,使われている材料(青銅あるいは黄銅)の判別を成分分析によって行い,それから製作方法も知ることができるのではないかと考えた。今回,ベトナムのゴング15枚の成分分析を行う機会を得たので,その結果を報告する。本報で測定に用いたゴングセットをFig. 1に示す。このゴングセットは,6枚のコブ付きゴング(Bossed Gong)と9枚のフラットゴング(Flat Gong)の計15枚のゴングにより構成される。これらのゴングはベトナム中央高原に住む少数民族ジャライ族の調律師が所有し─ 19 ─日本大学生産工学部研究報告A2022年 12 月 第 55 巻 第 2 号Keywords: Bossed Gong, Flat Gong, Central Highlands of Vietnam, Metal Composition資 料Analysis of Metal Composition of Gongs Owned by Ethnic Minorities Living Hiroyoshi SHIOKAWA*, Kazuto NAKAGAWA** and Eisuke YANAGISAWA***in the Central Highlands of Vietnam1.序論塩川博義*,中川一人**,柳沢英輔***2.測定対象のゴングセットベトナム中央高原に住む少数民族が所有するゴングの金属成分分析
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