日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第55巻第2号
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本稿は、学術論文の専門分野に着目して、研究活動におけるイノベーション戦略の国・地域別比較からその分類を試みるものである。分析では、ビッグデータ技術の論文を題材として、国・地域別のビッグデータ技術の適用・応用分野を示して考察を展開している。経営学におけるイノベーションとは、既存知と既存知の新たな組み合わせによるシナジー効果の探究と捉えることができる。本稿では、その既存知の組合せ方法の分類方法として、新たに「両効きの経営」のフレームワークを適用した。「両効きの経営」は、新たな知を求めて異分野との融合を求める「知の探索」、分野内または親和性の高い知を活用する「知の深化」の2つの戦略から構成されており、本稿では、その戦略の違いを抽出し考察している。本稿の分析は2段階で構成されている。まず、シュンペーター的競争のイノベーション戦略における「人的多様性」という概念を元にして個人のイノベーション力を抽出している。そして、それら個人の能力を地域・国別に積み上げることで、地域・国別等の組織別のイノベーション力を抽出している。分析データは、ビッグデータ技術の論文数上位10カ国の3年間の学術論文データベース(2016~2018年)を使用している。データは、筆者らが提案した共著者分析法と、新たに提示した分野横断的な連携表示法を用いて処理している。分析の結果、ビッグデータ研究における分野横断的な融合のスタイルを3つのパターンに分類することができた。要  旨─ 16 ─水上祐治研究能力評価におけるシュンペーター的競争の新たな指標:学術文献データベースを用いた著者分析

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