生産工学部研究報告A(理工系)第55巻第1号
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2.2 結果Fig. 2はメタンとプロパンにおける当量比と点火確率の関係を示す。過濃メタンと希薄プロパンにおいて,LBALDIを用いることで点火限界がそれぞれ過濃側,希薄側に拡大していることが分かる。それらの効果を示した混合気条件はルイス数>1に相当する。すなわち,メタン過濃側とプロパン希薄側はルイス数が1より大きい。ルイス数>1において点火直後の曲率半径の小さい火炎では,物質が輸送によって反応帯に流入することと比較して反応帯から熱が輸送されることの方が支配的となり,火炎が弱められる8)。すなわち,火炎曲率半径が大きいLBALDIの広域点火が有利となり,Fig. 2は前記を実証している。Fig. 3はLBALDIと通常の火花点Fig. 2  Dependence of ignition probabilites of on equivalence ratio(φ) for methane/air and propane/air mixture.─ 12 ─Fig. 1 Experimental setup.ズを飛躍的に大きくすることで点火性能の大幅改善に貢献することが狙いである。一方,レーザーブレイクダウン支援長距離火花放電のメカニズムと制御法は不明な点が多い。またその点火燃焼特性も未知である。そこで本報の第1の目的は,希薄混合気点火におけるLBALDIの広域点火の有効性を定容容器を用いて明確にすることである。また重要な基礎特性として燃料依存性も明らかにすることも目的としている。また,LBALDIにおける放電電圧印加方向とレーザー照射方向との角度依存性は詳しく分かっていない。レーザーブレイクダウンで発生する衝撃波やプラズマ成長方向と高電圧印加方向の最適化によって,さらなる長距離放電が期待できる。そこで本報の第2の目的は,レーザーと高電圧印加の角度が放電距離に及ぼす影響を明らかにすることである。2.1 実験方法・装置Fig. 1に実験装置を示す。定容容器に石英窓を絶縁物として保持した電極(直径3mm)を対向させて配置した。Nd:YAGレーザーパルス(波長532nm,パルス幅7ns)を電極軸の斜め方向(30°)から入射し,凸レンズ(焦点距離f=100mm)により電極間中心に集光してレーザーブレイクダウンプラズマを形成した。電極形状は,レーザー光が電極を照射することによるプラズマ形成を避けるために先端を尖らせた。電極距離は,従来の火花点火(SI)では1mm,LBALDIの場合は8mmの長距離放電とした。火炎面の観察には高速度シュリーレン撮影を用いた。すべての石英窓の直径は5cmで,定容容器の容積は150cm3である。点火実験では,点火方式毎の放電エネルギーを制御するため3個の点火コイルを用いた。2個のコイルはSI点火,残り1個はLBALDIに用いた。高電圧印加の前にレーザーを入射しプラズマを生成させるとスパーク放電開始電圧が低下することが既に分かっており6),今回は11µs前とした。放電エネルギー及び抵抗の消費エネルギーは電流および電圧波形から算出した。レーザーブレイクダウン生成によるレーザーエネルギーの吸収量は,真空(ブレイクダウン無し)及び空気1気圧充填時(ブレイクダウン有)におけるレーザー透過エネルギーの差から求めた。なお本実験では9mJ/pulseの吸収量であった。放電のための全投入エネルギーは60mJとし,SIおよびLBALDI実験で同一として両者を比較した。燃料にはルイス数の異なるメタンとプロパンを用いた。定容容器を真空排気後,予混合ガスを大気圧充填し,室温にて点火実験を実施した。点火の有無は,圧力履歴の変化から判定した。点火確率は,同当量比にて10回の試行により求めた。AirFuelMFCsCurrent transformerResistorNd:YAGlaserGNDHigh speedcameraKnife edgeStaticmixerPlasmaLensColor filterPin holeArc LampSILBALDIDelay pulsar123456Ignition coilsHV probeDiodesPower meterventValveVacuum pump■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■2.定容容器を用いたLBALDIの点火特性とその燃料依存性

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