*日本大学生産工学部環境安全工学科教授 **日本大学大学院生産工学研究科機械工学専攻博士前期課程2年 ***日本大学大学院生産工学研究科機械工学専攻博士前期課程1年****日本大学生産工学部教養・基礎科学系教授脱炭素社会実現において,自動車の電動化は必須の状況であるが,電気自動車の普及には時間を要する。当分の間,ハイブリット自動車が普及していくため,従来の内燃機関の低燃費化が再び重要視されている。欧州に続き日本においてもダウンサイズ,高過給エンジンの研究が盛んに行われている。内閣府SIP「革新的燃焼技術」においても熱効率50%を目指してスーパーリーンバーンの研究・開発が行われた1)。エンジン燃焼の性能向上には,燃焼状態を左右する点火自体が重要であり,具体的には初期火炎核を大きくすることで,より薄い混合気での運転,あるいは急速な燃焼が実現され,一層の燃費向上が実現できる。しかし,ガソリンエンジンの点火方式は,エンジンが発明されて以来100年もの間,スパークプラグ放電による点火,すなわち点に近い小体積放電による“点状”の点火が用いられている。その点状の点火方式の燃焼性能限界をブレイクスルーするために,近年,様々な研究がなされている2),3)。広域点火(体積点火)を目指したマイクロ波放電やコロナ放電を利用した方法が試みられているが,エンジン筒内の高圧場では放電領域が縮小し狙い通りの広域点火は実現していない。このように広域点火技術は特に高過給・高EGR・超希薄燃焼のエンジン性能向上の重要なキー技術となっており,その実現が強く要望されている。一方,例えば前記内閣府SIPにおける点火の研究は従来のスパークプラグをベースに放電エネルギーを増加するに留まっているのが現状である。このように広域放電はその実現が望まれているが世界的に見ても研究例,実現例が少ないのが現状である。本研究は,火花点火ガソリンエンジンの希薄燃焼限界などに代表される燃焼性能を大幅に向上させる広域・同時点火方法(体積的点火)の実現を目指している。その実現方法として,レーザーブレイクダウン支援長距離放電点火(LBALDI:Laser Breakdown Assisted Long-Discharge Ignition)を考案し,これまで基礎検討を実施してきた4)−7)。LBALDIは,レーザー誘雷のように,レーザー誘起ブレイクダウンをトリガーとして長距離放電を形成させるもので,放電路に沿った“線状”あるいは“筒状”の広域火花点火が実現できると期待される。この広域点火により,従来のスパークプラグのような点状の点火の限界をブレイクスルーし,初期火炎核のサイ─ 11 ─日本大学生産工学部研究報告A2022年 6 月 第 55 巻 第 1 号Keywords: Volumetric Ignition, Discharge Plasmas, Laser Breakdown, Lean Combustion, Spark Ignition Engine資 料Fundamental Study on Laser Breakdown Assisted Long-Discharge Ignition (LBALDI)秋濱一弘*,齊藤佑哉**,瀬川泰聖***,大熊康典****,髙橋栄一*Kazuhiro AKIHAMA*, Yuya SAITO**, Taisei SEGAWA***, Yasunori OHKUMA****, and Eiichi TAKAHASHI*1.序論レーザーブレイクダウン支援長距離放電点火(LBALDI)に関する基礎研究
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