日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第54巻第1号
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─ 15 ─1.はじめに持続可能な企業活動を実現するために,製品やサービスの生産から消費,また廃棄に至る全体の管理をつかさどるサプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management: SCM)では,様々な環境への配慮が行われている。また,その取り組みの顧客や社会への公表は,企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: CSR)の観点から年々重要となっている。このような状況において,Murata1)は環境視点の改善活動の評価フレームワークをData Envelopment Analysis (DEA)2)-4)により提案している。本稿は,これを用い,株式会社日経リサーチが実施している環境経営度調査のデータから,国内製造業17業種の環境視点の改善活動について評価することを目的とする。本稿は5章で構成する。次章(第2章)では,本稿で用いるMurata1)の評価法について説明する。第3章では,本稿で評価する環境経営度調査のデータについて説明する。第4章では,第2章で紹介した方法により,第3章で取り上げたデータの分析結果を記述し,第5章で結論を述べる。2.環境視点の改善活動の評価法本章では,本稿で用いるMurata1)による方法論について説明する。ここでは,次節(2.1節)で説明する評価フレームと,2.2節で説明する評価フレームの要素である評価システムについて記述する。2.1 評価フレームQCDと略される品質(Quality),コスト(Cost),納期(Delivery)といった従来の管理指標は,製品やサービスといった生産活動のアウトプットとして顧客から評価される。これに対して,近年重要性が増している環境(Environmental)という管理指標については,上述に加えて,資材調達から生産,完成品物流,消費,廃棄,リサイクルといった活動,すなわち,顧客が通常目にすることがないサプライチェーンにおける活動が評価対象となる。そのため,企業では,環境報告書の発行や工場見学による現場紹介などを通して,社会に取り組みを公表する必要がある。このような背景から,環境視点の改善活動では,単に成果を出せばよいというわけではなく,その公表活動の評価も重要になる。QCDのような従来型の改善活動評価は,Fig. 1に示す評価フレームで行われる。すなわち,フレーム内にある評価システムには,改善プロジェクトの実施結果が入資  料日本大学生産工学部研究報告A2021年 6 月 第 54 巻 第 1 号DEAを用いたサプライチェーンにおける環境視点の改善活動の評価村田康一*Evaluating Environmental Kaizen Activity in Supply Chain with DEAKoichi MURATA*Keywords:Supply Chain Management, Environmental Kaizen, Data Envelopment Analysis (DEA).*日本大学生産工学部マネジメント工学科教授

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