日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第54巻第1号
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─ 13 ─平均値を示す。各試験体の平均値として表記するとAからFのどの高さでもヤング率・比例限荷重ともに樹皮側が高い値を示している。一方,密度に関しては,髄側が高く,樹皮側に低くなる傾向を示した。つまり,通常材質的には密度とヤング率は相関が見られるが,スギ丸太内の半径方向では,この関係が成り立たないことを示している。4.結論本研究において,長さ約2m50本の丸太のヤング率の計測および10本の丸太から採取した小試験体の曲げ試験を実施した結果,以下の知見を得た。密度分布について1 高さ方向の傾向は見られない。2 丸太中心(髄)付近の密度は高く,樹皮側に行くほど低くなる。ヤング率分布について,1 高さ方向の傾向は見られない。2 髄付近のヤング率は低く,樹皮側ほど高い傾向を示す。以上のように通常木材では,密度が高いほどヤング率が高くなる傾向が知られているが,1本のスギ丸太においては,半径方向の分布においては,ヤング率と密度は比例しないことが示された。参考文献1)平井信二,林本の重量生長に関する研究(第3報)茨城県大子産スギ,東大演報(39),19512)伏谷賢美,木材の物理,文英堂出版,p203)小泉章夫,秋田県産スギ材の強度特性(第1報)丸太のヤング率,木材学会誌43(1)1997,46-514)小泉章夫,秋田県産スギ材の強度特性(第2報)挽板の強度,木材学会誌43(2)1997,210-2145)飯島泰男,秋田県産スギ材の強度特性(第3報)丸太とひき板材質の関連,木材学会誌43(2)1997,159-1646)(公財)住宅木材技術センター,構造用木材の強度試験マニュアル(2011年3月版),2020/4,https://www.howtec.or.jp/files/libs/1828/ 201712121507021978.pdf(R 3.1.29受理)謝辞本研究は,令和元年度および令和2年度鎌田研究室の卒業論文の一環として実施した。 研究に取り組んだ水沼満,佐藤吉一ら卒業生各位に感謝いたします。また,本研究は,科研費 若手研究 18K14503の助成を受けたものです。

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