日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第54巻第1号
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─ 9 ─1.はじめに木材は生物資源材料であるため,剛性,強度にばらつきが生じることは,周知の事実である。このため,建築などで利用する際には,設計上のヤング率や強度を知る必要があり,実際に利用する木材の値を使うのでなく,統計上の処理を行った値を利用し設計することがほとんどである。つまり,木造建築では,設計用の材料強度を低く見積もる必要があり,必要以上に大きな部材などを要求する場合がある。また,木材のヤング率がばらつくことは知っていても,木材内部にもヤング率の分布があることを知らない者も多い。近年,打音試験などの非破壊検査が,スマートフォン用アプリケーションソフトなどを用いることで,比較的容易になり,ヤング率を推定することが可能となっている。打音試験は,1つの値を出すことができるものの,木材内部のヤング率分布を知ることはできない。丸太のヤング率分布に関する研究は,古くは,平井ら1)の行った計測が書籍2)でも紹介され知られている。また,小泉・飯島3)4)5)らの一連の研究で,秋田県の丸太のヤング率分布等が明らかにされている。しかし,これらの知識は,木材を学ぶもの向けであってなかなか一般建築従事者にはあまり知られていない。そこで,本研究では,千葉県産の長さ約4mのスギ丸太から順次加工し,約2mの丸太,皮付き板材,最後に長さ250mmの小試験体を作成し各段階においてヤング率計測を行った。丸太と皮付き板では,打音試験を実施し,小試験体では曲げ試験でのヤング率計測を行った。それぞれの段階でヤング率・密度の状態を比較し,最終的には,双方を比較することで非破壊試験でのヤング率推定の一例を示すことを目的とした。また,曲げ試験では,簡易的な試験機器を自作し,実施した。本試験機は令和2年度コロナ環境下で,学生実験等を密にならない状況で実施する必要が発生したため検討した機器である。2.試験体および試験方法2.1 丸太および皮付き板試験体長さ4mのスギ丸太25本(千葉県産:直径約22cm)を千葉県内の林木市場で購入した。丸太は主に,立木を伐倒した際の下から2番目の丸太(2番玉)であった。学内に搬入の前に長さ方向を約半分に切断し,2m材50本とした。これら50本の丸太に対し,重量計測および打音を用いた縦振動法でのヤング率計測を実施した。その後,Fig.1に示すように中心付近Core材を4から5cm程度残るように外側から帯鋸盤(ノコ代は約3mm)を用いて,厚さ約12mmの樹皮付きの板材に加工した。このことから,約220mmの丸太において5カッ資  料日本大学生産工学部研究報告A2021年 6 月 第 54 巻 第 1 号スギ丸太内部の密度・ヤング率分布調査鎌田貴久*Survey on Density and M. O. E. Distribution of SUGI LogsKAMADA Takahisa*Keywords:SUGI Log, M. O. E, Density*日本大学生産工学部建築工学科 専任講師

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