─ 6 ─3),京葉等の河川河口には広大な砂州がみられた。臨海域は比較的早い時期から埋め立てられてきたが,1970年代当初,住宅地は都心から20km圏内までに密集しており,郊外には既成市街地が限定的に分布し,首都圏の中でも宅地化が可能な未宅地の面積が極めて大きかった(Fig. 5(b),(c),Table 1)。4.2 成長期(1972年~1993年),低成長期(1993年~2013年)成長期の1993年迄に1972年度に比べて約3.3倍の増加を示す都市的土地被覆は,20km~50km圏の丘陵地・台地等で拡大しながら広がり,続いて低地への拡大へと推移した(Fig. 6(c),Fig. 8(a)~(g),Fig. 9,Fig. 10)。成長期に対し低成長期と呼称する1993年~2013年において,大規模開発は局所的となり都市的土地被覆は既存の市街地を核にその周辺や外縁に拡大した(Fig. 9)。成長期ほどではないが,都市的土地被覆は面積的に1993年からでも約1.2倍,1972年からでは約3.8倍,明治期より2013年迄のおよそ130年間では約30倍も膨張させられた(Fig. 4(b),Fig. 7(a),Fig. 8(a)~(g),Fig. 9,Table 1)。土地被覆の時系列画像(Fig. 8(a)~(g))および変化抽出画像(Fig. 9)からは,土地被覆改変が首都圏の時代的特徴を反映していることが認識できる。(ア)元々,地盤的に軟弱な地であるのに,第2次世界大戦直後のカスリーン台風等,幾多の被災からも復興し,都市化した。(イ)成長期には大規模な土地被覆改変が丘陵地・台地および低地に拘わらず生じ,低成長期では局所的になったものの都市域は拡大した。土地被覆改変に伴う都市化域内の液状化等による災害発生予想域は徐々に膨張した。(ウ)過度の一極集中により都市化の歪が顕著化したところに,軟弱域での被害が多発するであろう受災期に入り,首都圏は新たな時代に陥りつつある。5.展望(減災分野への利用の可能性)5.1 土地被覆改変がもたらす災害発生域の把握土地被覆改変は洪水や地震による災害増加にも影響する。GISシステムの新旧地理空間情報の解析から,土地被覆改変により被害が発生した地域に着目すると,都市化域内の被害発生予想域を把握できる可能性がある。列島が受災期に陥り,東日本大震災の直後には,国交省や地盤工学会等により,関東地方の地盤液状化現象に関する包括的な調査研究がなされた1)。その一方で,立ち入りが制限される地域があり,調査を困難にしていることも指摘された。減災の基本は時代を遡り,土地被覆の改変前後の地表面につき,同一規格で全体像を捉え,被害が生じた地域と同様な特徴を示す地域を抽出することが肝要である。迅速測図(Fig. 4(b))と大震災後の2013年収集の衛星画像(Fig. 7(a))との合成画像に着目した(Fig. 7(d),(e),Fig. 11)。この画像からは土地被覆改変により造成され,大震災時に液状化を生じさせた東京湾岸の浦安市等と同様なパターン(Fig. 11赤破線)を抽出することができる。例えば,①低地では沖積の浸水域,②新興地,湾岸等,人工改変地形,さらに,③丘陵地・台地では扇状に流下する旧河道,地形区分の境界(崖等)や地滑り面,縁辺である。主に湿地として示された領域がその後,都市化された地域等である。①や②では,(a)東京下町(隅田川・荒川,江戸川流域)(Fig. 11赤破線)から東京北方,(b)多摩川流域や河口の川崎から横浜にかけての京浜臨海工業地帯(Fig. 11青破線,Fig. 3),千葉,木更津近郊の京葉臨海工業地帯,(c)相模川流域,江の島・藤沢の湘南の低湿地,(d)利根川中流域等の沖積低地等15),③では多摩川流域の武蔵野台地を刻む石神井川4)13)(Fig. 11黄破線),善福寺・神田川等の流路沿いにおいて被災リスクが懸念される14)16)17)。Table 1 Urban land cover alteration by time and distance in the Tokyo metropolitan area.Distanceurban area(km2)ratio1972199320131993/19722013/19932013/1972<10km180.3180.0150.41.00.80.810-20km227.9465.6403.52.00.91.820-30km91.3397.6428.04.41.14.730-40km87.5457.3525.05.21.16.040-50km50.1377.4466.77.51.29.350-60km30.5188.7283.96.21.59.360-70km29.1124.2209.14.31.77.2>70km42.4219.1320.35.21.57.6total739.12409.92787.03.31.23.8Fig. 10 Urban land cover change by time and distance in the Tokyo metropolitan area.
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