日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第53巻第1号
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─ 59 ─研究成果⑴ 遠藤汰紀,清水耕作,“IPES/PYS及びKP法を用いたヘテロジャンクション特性の評価”第16回薄膜材料デバイス研究会,2019.11.10,09P10,126.令和元年度利用状況 N型酸化物半導体-P型有機物半導体のヘテロジャンクションと太陽電池効率向上化について検討を行っている。本年は,有機-無機物ヘテロジャンクション構造のバンドオフセット評価とデバイス特性との関連について検討を行った。本年はPEDOT:PSS/In-Sn-Zn-Oジャンクションについて実験を進めた。 PEDOT:PSSは,有機物に分類されるp型材料である。溶液の状態であるのでスピンコータにて薄膜を作製した。In-Sn-Zn-Oが疎水性であるため表面でのぬれ性が大きな鍵となった。プラズマによる表面酸化,プライマ塗布,またホットワイヤ水素化を検討した。検討の結果,短時間のプラズマ酸化を行った後に塗布し,しかも極力少ない回数で目標膜厚50nmにすることが表面欠陥を低減させるために重要であることを明らかにした。またIn-Sn-Zn-O薄膜は,SPRAY法を用いた。昨年度までは,スパッタ法で作製していたが,バルク構造の柔軟性とコストの低減を目標にしているため,今年度は真空プロセスを用いない方法を採用した。本方法は,他機関での他の材料系では一部成功しており,応用も進んでいるが本In-Sn-Zn-O材料系では,まだ初めてのことである。本年度は,組成比が1:1:1になるべく検討を進めてきたが,成分が水と反応することにより,水酸化物となり沈殿する,また溶液中の濃度が不均一になるという現象を確認し,これらが薄膜材料の組成不均一性に大きく影響していることを明らかにした。以上の対策の元,薄膜を作製しPYS, IPES,KPを用いてバンドオフセットの評価を行った。単体のバンド構造は,他の研究機関や文献値にほぼ整合していることが分かった。しかし,太陽電池の特性としては十分な値が得られたわけではなかった。原因の多くは,バンドオフセットに対して空乏層の広がりが得られていない。ダングリングボンド欠陥ではなく,材料欠陥準位によって空乏層の広がりが阻害されていることがCV法による評価で明らかとなった。この結果を受けて,来年度はSPRAY法の装置改善,PEDOT:PSSの成膜最適化をさらに検討することで,界面状態の高品質化に向けて検討を進めたいと考えている。No.4設備・装置名 称半導体電子物性解析装置型 式光電子収量分光装置 PYS-200+型真空型ケルビンプローブ UHVKP020IPES装置分析チャンバー使用責任者電気電子工学科  清水耕作購入年度平成24年度共同使用者電気電子工学科  新妻清純応用分子化学科  山根庸平

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