─ 41 ─淡差が薄く,認証に少し時間がかかってしまう場合があった。提案手法1と提案手法2を比べてみると,LINE, Chrome, Twitter, Apple標準の4種のQRコードリーダーで,提案手法2で作成したシェア画像と復元画像のQRコードの読み取り精度が向上した。これは,提案手法1に比べて提案手法2のシェア画像と復元画像が明るくなったことと,1ピクセルを4分割していたものから16分割にしたことにより画像の滑らかさが向上し,黒セルと白セルの識別がしやすくなったことが主因だと考えられる。また,提案手法1と提案手法2のシェア画像,および復元画像での読み取り精度はそこまで差はないが,QRコードの読み取りに時間においては,提案手法1よりも提案手法2の方が素早く読み取ることが可能であった。5.結論本稿では,Caoらの手法を拡張し,視覚復号型秘密分散法ではなく拡張視覚復号型秘密分散法を用いることでそれぞれ別の情報が載った2枚のQRコードのシェア画像から秘密のQRコードを復元できる手法を提案した。従来手法をQRコードに適用した場合,シェア画像は白いピクセルと黒いピクセルがランダムに配置された砂嵐画像になってしまう。一方,提案手法では,シェア自身にも意味のあるデータを組み込むことが可能になる。提案手法をQRコードに適用した場合,シェアの画像のQRコードをQRコードリーダーで読み取ることは可能であった。また,復元画像においてはシェア画像を重ねたときに白ピクセルになる個数によって復元画像の濃淡差が変化するため,その明るさを上げることによって読み取り精度が向上する。ただし,シェア画像や復元画像を明るくするために余計に濃淡差の階層を増やしてしまうとQRコードリーダーの読み取り精度が落ちてしまう。また,拡張視覚復号型秘密分散法では,復元画像の白ピクセルはシェア画像の黒ピクセルと同じ暗さになるので,視覚復号型秘密分散法ほど明るくすることはできない。これは,分割数を増やすことにより,シェアの取り得る組合せ数を増やすことで改善されるが,濃淡差がある程度ないとQRコードリーダーが濃淡差を読み取ることができないという問題があり,どの程度まで提案手法を明るくすることが可能なのかを調べることが今後の課題である。今回の評価を通して,視覚復号型秘密分散法や拡張視覚復号型秘密分散法をQRコードに適用した場合,作成されたシェア画像と復元画像のQRコードは,読み取る環境により読み取り精度がかなり変わることが分かった。具体的には,読み取るQRコードのクワイエットゾーンより外側が黒いとQRコードの濃淡差を読み取りやすくなり,逆に,クワイエットゾーンより外側が白いと読み取りづらくなってしまうことが分かった。また,シェア画像の1枚を紙に印刷し,もう1枚のシェア画像をOHPシートに印刷した場合,2枚のシェア画像を重ねることで復元画像のQRコードを読み取ることはできたが,2枚のシェア画像にズレがないように重ねることは非常に困難であり,また,重ねたシェア画像は暗くなり読み取りづらくなってしまうことが分かった。したがって,提案方式を実現する場合,紙に印刷した2枚のシェア画像をスマートフォンのカメラで読み取り,読み取った2つの画像をソフトウェア上で重ね合わせ,復元画像をスマートフォンの画面上に表示するアプリケーション等の利用が有効であると考える。また,スマートフォンのソフトウェアの場合,さらに大きなしきい値でも提案方式を実現することができる。謝辞本研究はJSPS科研費18K11303の助成を受けたものです。参考文献1)Adi, Shamir. :How to share a secret. Communications of the ACM, 22 (1979), 11, 612-613.2)Moni, Naor., Adi, Shamir. :Visual Cryptography. Lecture Notes in Computer Science, 950 (1995), 1-12.3)JIS, X,0510. :二次元コードシンボル─QRコード─基本仕様。日本規格協会,(2004)。4)Xiaohe, Cao., Liuping, Feng., Peng, Cao., Jianhua, Hu. :Secure QR Code Scheme Based on Visual Cryptography. Advances in Intelligent Systems Research, 133(2016), 433-436.5)G.,Ateniese., C.,Blundo., A.,De, Santis., D. R.,Stinson. : Extended capabilities for visual cryptography. Theor. Comput. Sci., 250(2001), 143-161.6)Yue, Jiang., Yuliang, Lu., Xuehu, Yan., Lintao, Liu. : Extended Secret Image Sharing with Lossless Recovery Based on Chinese Remainder Theorem and Quick Response Code. 2018 IEEE 3rd ICIVC, (2018), 678-683.7)Xin, Zhang., Jia, Duan., Jiantao, Zhou. :A Robust Secret Sharing QR Code via Texture Pattern Design. 2018 APSIPA ASC, (2018), 903-907.8)クルクル-QRコードリーダー。2020/02/01,
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