─ 35 ─1.序論視覚復号型秘密分散法(VSSS)とは,1979年にShamir1)が提案した秘密分散法を画像に応用した手法であり,1994年にNaorとShamir2)が提案している。この手法では,秘密にしたい画像を複数枚のシェアと呼ばれる画像に分散処理し,そのシェア画像単体からでは元の秘密の画像はわからないが,あらかじめ定められたしきい値以上のシェア画像を重ね合わせることにより,元の秘密の画像を復元することのできる秘密情報の分散管理方式である。また,NaorとShamirは,シェア画像にも意味のある画像を載せることのできる拡張視覚復号型秘密分散法(EVSSS)も同論文内で示唆している。一方,QRコード3)とは,株式会社デンソーウェーブが開発した2次元コードであり,URLなどの埋め込み以外にも,近年では決算方式での利用が増えてきている。視覚復号型秘密分散法をQRコードに適用した研究としては,2016年にCaoら4)が提案した視覚復号型秘密分散法を用いて,2枚のシェア画像を重ねることによりQRコードの秘密画像を復元する手法がある。しかしながら,Caoらの手法では,シェア画像は白いピクセルと黒いピクセルがランダムに配置された砂嵐画像となってしまう。そこで,本稿では,Caoらの手法を拡張し,視覚復号型秘密分散法ではなく拡張視覚復号型秘密分散法を用いることでそれぞれ別の情報が載った2枚のQRコードのシェア画像から秘密のQRコードを復元できる手法を提案する。提案手法では,シェア自身にも意味のあるデータを組み込むことが可能になる。また,5種のQRコードリーダーを用いて,Caoらの手法と提案手法をQRコードに適用し,提案手法の読み取り精度を評価することで提案手法の実用性を評価する。2.準備2.1 秘密分散法Shamirの提案した(k, n)しきい値法とは,秘密情報をn個のシェアに分割し,n個のうち任意のk個のシェアを集めることにより秘密情報を復元することができる手法であり,k−1個のシェアからは元の秘密情報がまったく得られない。2.2 視覚復号型秘密分散法NaorとShamirが提案した視覚復号型秘密分散法では,1枚の画像データに秘密分散法を適用する。一般的な(2, 2)しきい値視覚復号型秘密分散法((2, 2)資 料日本大学生産工学部研究報告A2020年 6 月 第 53 巻 第 1 号(2, 2)しきい値拡張視覚復号型秘密分散法の QRコードへの適用大川直也*,栃窪孝也**Extended Visual Secret Sharing Scheme for QR CodeNaoya OKAWA* and Kouya TOCHIKUBO**Keywords:Visual Secret Sharing Scheme, QR Code, Secret Sharing Scheme *日本大学生産工学部数理情報工学科4年**日本大学生産工学部数理情報工学科准教授
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