─ 31 ─れが過剰にあると汚れていく。洗浄タンクに菌数が多いのは,タンク内に蓄積した食品残渣が細菌の栄養源になっているためと考えられる。庫内に細菌を増やさないためには,使用後のケア方法として,しっかりと食品残渣を取り除き,細菌の増殖に必要な水分を残さないよう庫内を乾燥させることが重要である。高温(50から60℃)で生育可能な好熱性細菌に分類された株の属名は,Anoxybacillus属,Geobacillus属,Meiothermus属,Pseudoxanthomonas属,Petrobacter属であった。好アルカリ細菌に分類される属は,Anoxybacillus属,Exiguobacterium属であった。Anoxybacillus属は,グラム陽性桿菌で,通性嫌気性菌である。その多くが好アルカリであり,pH 8.0から10.5で生育が可能で,すべての種が50から62℃に至適生育温度を持っている4)。Exiguobacterium属はpH 6.5から11.5で生育が可能である4)。今回の結果は,実際の食洗機内でこれらの細菌がその生育条件より更に高い温度(60から80℃)や高アルカリ(pH 11から12)環境下に耐えうることを示唆している。同定された菌株にカタラーゼ陽性株が多かったことは,食洗機の環境が好気的であることを示唆している。今回の調査の中で,食中毒を引き起こす細菌は検出されなかったが,本来清浄に洗浄するための食洗機が不衛生であると,食器への二次汚染を招く原因となる。一方で,Acinetobacter属のAcinetobacter haemolyticus, Acinetobacter junii, Acinetobacter lwoi, Moraxella属のMoraxella osloensis, Paracoccus属のParacoccus yeei, Staphylococcus属のStaphylococcus saprophyticus, Staphylococcus epidermidisは,日和見感染の原因菌であると報告されている5)。健常人にとっては問題とならない細菌でも,免疫不全患者や易感染患者に感染すると重篤な感染症を引き起こす場合があるため,日和見感染菌と同属の細菌が病院,高齢者施設で検出されることは好ましくない。洗浄機庫内の衛生にもユーザーの関心を向け,洗浄剤の適切な使用方法と管理方法を啓発していくことが我々の責務と考える。Table 4 Bacterial ora of conveyor-type dishwashers.Parts No.Cultivated at 35℃Cultivated at 60℃Gram-positiveGram-negativeGram-positiveGram-negative1Bacillus (1)Isoptericola (1)Rhodococcus (1)Paracoccus (1)−−−2Bacillus (1)Micrococcus (1)−−−3Bacillus (2)Isoptericola (2)Paracoccus (1)−−4Bacillus (2)Micrococcus (1)Caulobacter (1)Psychrobacter (1)Paracoccus (2)Anoxybacillus (1) −5Bacillus (2)Aerococcus (1) Staphylococcus (1)Micrococcus (1)Barrientosiimonas (1)Psychrobacter (1)Acinetobacter (1)Paracoccus (1)Moraxella (1)−−6Bacillus (2)−−−7Bacillus (1)−−−8Bacillus (2)Microbacterium (1)Pseudomonas (1)Paracoccus (1)−−9Kocuria (1)Pseudomonas (1)Moraxella (1)Acinetobacter (1)Brevundimonas (1)−− ( ):Number of dishwashers in which strains were isolated
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