─ 24 ─乗の関数として示した。Fig.4(e)の白プロットが瞬時蒸発速度係数を,黒プロットがその平均値を表している。他の雰囲気温度条件のグラフは,瞬時蒸発速度係数の変化の傾向を見やすくするため,平均値のみを示した。瞬時蒸発速度係数は雰囲気温度によって値が大きく変化したため,グラフの縦軸が5つのグラフでそれぞれ異なっていることに注意して頂きたい。前述のように,いずれの雰囲気温度条件においても瞬時蒸発速度係数が一定になる期間はなく,液滴寿命全体に亘って液滴蒸発が非定常であることがわかる。温度が高い条件では,液滴直径が大きい期間で瞬時蒸発速度係数は大きく増大し,極値をとってからは液滴直径が小さくなるのに伴って瞬時蒸発速度係数は減少した。雰囲気温度が低くなるのに伴って,極値が無次元液滴直径の大きい方に移動した。雰囲気温度が373 Kの条件では,瞬時蒸発速度係数は極値をとらずに減少し,直径が小さくなると瞬時蒸発速度係数はゼロに漸近した。液滴直径が大きい期間で液滴直径の減少に伴って瞬時液滴蒸発速度係数が増大するのは,初期加熱期間終了後も液滴温度が上昇を続けるからと考えられる。極大値をとった後に,瞬時液滴蒸発速度係数が液滴直径の減少に伴って減少するのは,揮発性の高い燃料成分が速く液滴から蒸発するため,蒸発の進行に伴って揮発性の低い燃料成分濃度が液滴の中で増大したからだと考えられる。これは,混和性多成分燃料特有の蒸発挙動であり,軽油液滴の蒸発でも観察されている5)。Fig.5に,正規化95vol%液滴寿命と雰囲気温度の関係を示す。本実験の雰囲気温度範囲で正規化95vol%液滴寿命は強く雰囲気温度に依存し,雰囲気温度の増大に伴って減少した。特に温度の低い範囲で正規化95vol%液滴寿命は大きく変化した。Fig.6に,液滴寿命に占める初期加熱期間の割合の雰囲気温度依存性を示す。雰囲気温度が増大するのに伴って初期加熱期間が液滴寿命に占める割合は急激に増大し,雰囲気温度が高い範囲ではその増大率が小さくなった。この結果より,高温雰囲気における液滴蒸発寿命を見積もる場合には,初期加熱期間を考慮する必要があることがわかる。すなわち,液滴温度の非定常性を考慮することが,高温雰囲気における液滴蒸発寿命の見積もりには重要である。4.結言焼結鉱製造工程でA重油が霧化される雰囲気温度範囲である373から573 KでA重油単一液滴蒸発実験を行った。再現性良く液滴の直径履歴を取得することができ,瞬時蒸発速度係数および正規化95 vol%液滴寿命を得た。実験を行った雰囲気温度範囲では,A重油液滴の蒸発は非常に強い非定常性を示した。これは,蒸発中の液滴温度上昇と混和性多成分燃料であることが原因であると推察された。前者の影響は,高温雰囲気中の蒸発で顕著であった。雰囲気温度が573 Kから373 Kに低下することで,正規化95 vol%液滴寿命は約2000倍長くなることがわかった。謝辞本実験は,JFEテクノリサーチ株式会社からの委託研究として行われた.ここに謝意を表す。参考文献1)Yuji Iwami, et al: Study of gas fuel or liquid fuel injection technology in iron ore sintering process, Fig. 6 Ratio of initial heat-up period to droplet evaporation lifetime as a function of the ambient temperature.Fig. 5 Normalized droplet evaporation lifetime as a function of the ambient temperature.
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