─ 18 ─インドネシア・バリ島におけるガムラン・プレゴンガンの変遷塩川博義,梅田英春,皆川厚一,鈴木良枝,イ・マデ・カルタワン概 要バリ島で一般的に使われているガムラン・ゴング・クビャールを中心に,日本とバリ島で,約100セットのガムランの測定解析を行ってきた。その結果,バリ島の教育機関SMKIとASTIと関わりのあるガムラン・ゴング・クビャール11セットの音名 ‘ding’ の音高はC#かDであり,特にASTIより新しいそれらは,いずれもC#であることが明らかにされた。本報では,ガムラン・ゴング・クビャールよりも古く,レゴンダンスあるいはバロンダンスの伴奏のために使われるガムラン・プレゴンガン11セットの鍵盤楽器における基本周波数の音高を分析し,比較検討している。11セット中3セットは,トロンポンがあるガムラン・スマルプグリンガンでもある。ガムラン・プレゴンガンは,ガムラン・ゴング・クビャールと同様,ペロッグ音階を持っている。これらを分析した結果,10セットの音名‘ding’における音高は,いずれもC#からD# の間であることが明らかにされた。ガムラン・スマルプグリンガンに分類されるトロンポンがあるガムラン・プレゴンガン3セットのそれは,いずれもD# である。トロンポンがないガムラン・プレゴンガン7セットのそれは,DかC#である。特に,1930年以降に製作されたもののそれはすべてC#である。これらから,当初,器楽演奏用のガムラン・スマルプグリンガンとして製作されたガムラン・プレゴンガンの音名‘ding’は,基本的にD#で製作されて,20世紀に入り,レゴンダンスやバロンダンスなどの踊りの伴奏に使われるようになるにしたがって,ガムラン・プレゴンガンは音高を下げて製作されるようになっていったという傾向がみられる。
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