日本大学生産工学部 生産工学部研究報告A51-2
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─ 32 ─することになる。よって,支点から8m付近までの曲げ剛性を高める必要がある。この対策としては鉄筋や鋼板格子筋を配置してポリマーセメントモルタル(PCM)吹付け22)による下面増厚補強が上げられる。下面増厚補強法には鉄筋を配置して,コンクリート表面を研掃後,直接PCMを吹付け補強する工法や,鉄筋配置後,床版下面のひび割れ箇所にひび割れ補修用の器具を取り付け,PCM補強した後に,取り付け器具から接着剤を圧入する下面増厚補強23)も挙げられる。さらに,鉄筋に替わる引張補強材24)や鋼板格子筋25)が提案され,これらは一面加工されていることから鉄筋に比べて増厚層が薄くなる。また,床版コンクリート下面と吹付けPCMとの付着性を高める工法として,接着剤塗布型PCM下面増厚補強法がある。これらの工法により下面を増厚することで,RC床版の耐疲労性の向上が図られるものと考えられる。8.まとめ本研究では,伸縮継手の段差等によって発生する振動荷重が±20%および±30%を許容した場合のRC床版の耐疲労性の評価について実験研究であり,以下の知見が得られた。(1)伸縮継手の段差等によって発生する振動荷重が基準荷重100kNに対して±20%(上限荷重120kN,下限荷重80kN)の正弦波形が重畳することで,一定荷重で走行した場合の等価走行回数の69%,基準荷重100kNに対して±30%(上限荷重130kN,下限荷重70kN)の正弦波形が及ぼした場合は90%低下する結果が得られた。(2)筆者らが提案する破壊荷重付近の押抜きせん断耐荷力PS. maxの算定にはコンクリートの圧縮強度f'c,鉄筋の引張強度fyおよび輪荷重の設置面の辺長AおよびB等を適切に与えることで,破壊荷重付近の押抜きせん断耐荷力が適切に評価でき,S-N曲線は基準荷重に対して1本のS-N曲線式上にプロットされたことからこれらの整合性を確認することができた。(3)振動荷重がS-N曲線に及ぼす影響については,振動荷重による走行疲労実験の結果を,筆者らの押抜きせん断耐荷力PS. maxを用いて求めたS値と等価走行回数Neqの関係を用いて評価したS-N曲線と,一定荷重走行実験のS-N曲線式との関係を明らかにすることができた。(4)輪荷重走行疲労実験における振動荷重±20%,±30%が作用した場合の疲労寿命の予測式として式(6),(7)を提案した。これらの式を用いることにより,段差を有する伸縮装置等により発生する走行振動荷重を基準荷重の±20%,±30%許容した場合の疲労寿命予測の推定が可能となると考えられる。なお,振動荷重が及ぼす影響については更なる実験が望まれる。また,路面の凹凸による大型車両の荷重変動についてもさらなる調査が必要となる。(5)伸縮継手の段差量を20mm許容する場合は,日常点検において常に20mm以下となる維持管理が必要となる。また,伸縮継手の交換においては衝撃力を吸収する埋設型のジョイントへの交換,あるいは曲げ剛性を高めるための下面増厚補強などの検討が必要となる。謝辞本研究は,科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号80060218,研究代表者阿部忠)の助成を受けて行ったものである。ここに記して謝意を表す。参考文献1)建設省土木研究所構造研究室:橋の衝撃荷重に関する実験調査報告書(I-1987),土木研究所資料,No.2508, 19872)建設省土木研究所構造研究室:橋の衝撃荷重に関する試験調査報告書(I-1987),土木研究所資料,No.2426, 19873)横山功一,井上純三,福永隆:道路橋床版の衝撃係数に関する実験,構造工学論文集,Vol.35A,1989.3,pp.749-7564)日本道路公団伸縮継手改良委員会:伸縮継手調査研究(その4)報告書,1974.35)横山功一,井上純三,福永隆:路面段差部に作用する自動車衝撃荷重の特性,構造工学論文集,Vol.35A,1989.3,pp.757-7646)川谷充郎,大倉一郎,山田靖則,福本唀士,難波宗行:自動車走行による床版および橋梁各部の動的応答実験,構造工学論文集,Vol.36A,1990.3,pp.679-6847)阿部忠,木田哲量,星埜正明,加藤清志,徐銘謙:Fig.13 An example of a buried joint
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