日本大学生産工学部 生産工学部研究報告A51-2
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─ 28 ─はく離も著しい。破壊は床版中央から30cm付近の範囲で押抜きせん断破壊に至っている。また,振動荷重±30%で走行した供試体RC-35-V30の等価走行回数6.743×106回であり,等価走行回数は2.075×106回であり,一定荷重走行の等価走行回数比は0.084である。しかし,上面の損傷状況はFig.8(3)に示すように,上面,下面の損傷状況はほぼ同等である。破壊は中央から30cm支点側で押抜きせん断破壊となった。以上より,走行一定荷重による疲労実験および走行振動荷重による疲労実験におけるRC床版の破壊状況は,一定荷重による損傷状況に対して荷重振幅が大きくなることで,等価走行回数比は振動荷重±20%,±30%でそれぞれ0.275,0.084であるが衝撃の影響により破壊のひび割れ状況はほぼ同等であり,衝撃の影響により,早期に押抜きせん断破壊となった。よって,路面の凹凸を20mm以下とするように維持管理を行う必要がある。6.S-N曲線式および押抜きせん断耐荷力6.1 筆者らが提案するRC床版のS-N曲線式RC床版の疲労寿命予測式にはS-N曲線式が用いられている。筆者らは,既往研究13),14)において1994年改訂の道示の改訂に基づいて設計したRC床版の1/2,3/5モデルを用いて輪荷重走行疲労実験を実施し,式(3)で表されるS-N曲線式を提案した。文献4)においては,押抜きせん断耐荷力を松井らの提案S-N曲線式と同様にPsxとしてS-N曲線を表したが,筆者らの押抜きせん断耐荷力の算定式は走行荷重実験における破壊荷重付近の押抜きせん断耐荷力を用いていることから,本論文ではこれをPS. maxと区別して表記する。log (P/PS. max)=-0.06417 log N+log 0.996(3)ここに,P:基準荷重,PS. max:押抜きせん断耐荷力(kN),N:繰り返し回数(回)(本論文では等価走行回数Neqを適用する)6.2 RC床版の押抜きせん断力学モデルおよび耐荷力式(1) 筆者らが提案するRC床版の押抜きせん断力学モデルおよび耐荷力13),14):PS. maxS-N曲線式を用いてRC床版の寿命予測をするためには押抜きせん断耐荷力を適用する必要がある。筆者らはRC床版を用いて走行荷重実験を行い,一走行を維持した最大荷重を最大耐荷力とし,破壊状況から押抜きせん断力学モデルおよび破壊荷重付近の押抜きせん断耐荷力(PS. max)式を提案し,S-N曲線式(3)に適用している。筆者らが提案するRC床版の押抜きせん断耐荷力力学モデルは,走行荷重実験による破壊荷重付近の押抜きせん断力学モデルであり,Fig.9として与えている。Fig.9より,等価応力ブロックaの範囲にはコンクリートのせん断強度fcv0を考慮したせん断耐荷力,ダウエルの影響を受ける寸法効果Cdの範囲にはコンクリートの引張強度ftを考慮したはく離耐力とし,これらの合計が押抜きせん断耐荷力PS .maxとなる。よって,押抜きせん断耐荷力PS .maxは式(4)として表される。   PS .max=fcv0{2(B+2a)a+2(A×a)}       +ft{4Cd(2dd+B)} (4)ただし,   fcv0=0.688f'c0.610 ≦f'c=80N/mm2   ft=0.269f'c2/3ここで,A, B:輪荷重の軸直角方向,軸方向の辺長(mm),a:主鉄筋方向aX,配力鉄筋方向aYの等価応力ブロックの平均値(mm)(=(aX+aY)/2),Cd:ダウエル効果の影響を示す寸法効果(mm),すなわち主鉄筋のかぶりCX(=cX+DX/2,cX:主鉄筋かぶり,DX:主鉄筋の直径)と配力筋方向のかぶりCY(=cY+DX+DY/2,cY:配力筋かぶり,DY:配力筋の直径)の平均(mm)(=(CX+CY)/2),dd:主鉄筋の有効高さ(dX)と配力筋方向の有効高さ(dY)の平均(mm)(dd=H-Cd),H:床版全厚(mm),fcv0:コンクリートのせん断強度(N/mm2)13),14),ft:コンクリートの引張強度(N/mm2)15),f'c:コンクリートの圧縮強度(N/mm2)破壊荷重付近のコンクリートの押抜きせん断耐荷力は,せん断応力度が等価応力ブロックaの範囲に及ぼす影響によるものとする。降伏荷重付近の等価応力ブロックの大きさaは鉄筋の降伏強度fydを適用して算出するが,破壊荷重付近の等価応力ブロックaの算出には鉄筋の引張強度fyを適用する。したがって,RC床版に配置した圧縮鉄筋は降伏しないことから式(5)として与えられる。なお,式(5)は複鉄筋長方形断面における等価応力ブロックaの一般式16)であり,主鉄筋方向aXおよび配力筋方向aYをそれぞれ算出して,その平均値をFig.9 Punching Shear Load Capacity Model

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