日本大学生産工学部 生産工学部研究報告A51-2
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─ 18 ─解析には,有限要素法による電磁場解析ソフトPhoto-Eddy jω(㈱フォトン)を使用した。基礎方程式はマクスウェルの方程式に基づき, ∇×j+=Bμ∂D∂t(7) ∇・B=0(8) ∇×-=E∂B∂t(9)である。Bは磁束密度,jは電流密度,Dは電束密度,Eは電場である。ここで,式(7)中の伝導電流項jと変位電流項∂D/∂tとをオーダー比較する7)。解析における場の時間変化を正弦波と仮定し,電場E=E0 sin ωtとする。この時,伝導電流項は,オームの法則を適用して,式(10)と表せる。 j=σE0 sin ωt(10)また,変位電流項は,式(11)と表せる。 ==∂D∂t∂t∂(εE sin ωt)0εωE cos ωt0(11)ここで,E0は最大電場,σは導電率,εは誘電率である。よって,伝導電流項の最大値はσE0,変位電流項の最大値はεωE0である。ゆえに,これら最大値の比をとり, σεω=1>>変位電流項伝導電流項(12)であれば,変位電流項を無視できる。本解析においては,脳の灰白質の導電率は0.106 S/m,誘電率は8.85×10−12 F/m8),周波数は3 kHzであるので,σεω0.106(8.85×10 )×(2π×3.00×10 )-123== 6.35×101>>5(13)となり,変位電流項を無視できる。また,式(8)はベクトルポテンシャルAを用いて下式(14)で表すことができる。 B=∇×A(14)また,式(9)から下式(15)を得る。 ∇ϕ--=E∂A∂t(15)ここで,ϕは電位である。式(15)中の電位ϕには任意性があるため,ここではϕ=0と定義する。以上を踏まえて,式(14)を式(7)に代入すると,式(16)を得る。 =Aj××∇∇1μ(16)電流密度jは口腔内コイルに流れる電流密度j0と頭部内に生じる誘導電流密度j1=σEの和で表せるため,式(16)は,下式(17)となる。 σ∂A∂t=0Aj××-∇∇1μ(17)ゆえに,式(17)からベクトルポテンシャルAを求め,式(14)および式(15)にAを代入することで磁場および電流密度を得ることができる。以上の解析モデルおよび解析ソフトを用いて,口腔内コイルにより得られる脳底部での磁束密度(z軸成分)および電流密度を推定した。口腔内コイルには電流値1923 A,周波数3 kHzを印加した。口腔内コイルのコイル角θを0~90 deg.の範囲で30 deg.毎に変化させて,各コイル角それぞれにおいて解析を実施した。4.2 シミュレーション結果各脳底部に生じたz方向成分の磁束密度のシミュレーション結果をFig.8に示す。全ての脳底部位置について磁束密度の最大値は,口腔内コイル角が35~42 deg.の時に8.06~13.5×10−3 Tが得られた。ここで,海馬と視床については左右で同じ値を示した。実験結果との比較では磁束密度の値,最大値をとる時のコイル角およびグラフの形状がほぼ一致したことから両者の間で整合性Table 2 Conductivities of each brain parts.Fig. 8 Magnetic flux densities for various coil angles at each brain parts in the simulation.
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