日本大学生産工学部 生産工学部研究報告A51-2
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─ 17 ─ここで,Vpeakは最大誘導起電力の大きさである。ゆえに,サーチコイルに生じる最大誘導起電力の大きさVpeak および周期Tを,オシロスコープの出力情報から読み取ることで,最大磁束密度Bpeakは式(6)から計算できる。3.2 実験内容各脳底部(海馬;Hippocampusの左右およびその周辺の視床;Thalamusの左右,視床下部;Hypothalamus)を想定した5カ所の位置での,z軸成分の磁束密度を計測した。Fig.4に実験装置の概観を示す。磁気特性は,式(1)から透磁率に依存する。生体の透磁率は真空の透磁率(4π×10−7 H/m)であるため,実験装置も生体と同じ透磁率の材料(アクリル材など)で構成することで,生体の磁気特性を模擬した。サーチコイルは,Fig.5に示す脳底部各部位の位置関係となるように,それぞれ設置した。サーチコイルはφ6 mmのアクリル棒にφ0.3 mmのホルマル線を2層,計17回巻いて製作した。サーチコイルの有効半径は,巻厚の中央までとし,r=3.3 mmとした。口腔内コイルには電流値が1923 A,周波数が3 kHz(実測値)の単発パルス電流を印加した。電源装置は東京大学工学研究科関野研究室のTMS用電源装置(MagVenture製,MAGPRO COMPACT)を使用した。ここでは,口腔内コイルのコイル角θを0~90 deg.の範囲で10 deg.毎に変化させ,各コイル角での磁束密度を計測した。3.3 実験結果磁束密度の計測結果をFig.6に示す。ここで,図には2次関数の近似曲線を加えた。全ての脳底部位置について磁束密度の最大値は,コイル角が35~39 deg.の時に10.3~17.2×10−3 Tが得られた。ここで左右の海馬で磁束密度の値に顕著な差が出た。この原因として,口腔内コイルの製造過程で左右の非対称性が生じたことが,1つの要因として考えられる。Fig. 6 Magnetic flux densities for various coil angles at each brain parts in the experiment.4.頭部モデルを用いた数値シミュレーション4.1 シミュレーション内容解析用の頭部モデルは,独立行政法人情報通信研究機構が開発した数値人体モデルベース6)を使用した(Fig.7)。この頭部モデルは皮膚や骨,脳の視床および視床下部など計26カ所の頭部部位で構成されている。ここで,海馬は頭部モデル中に存在しないため灰白質中の一部分とした。各部位それぞれに対して導電率および比透磁率を設定した。導電率はGabrielの文献3)を基にして,Table 2に示す値を与えた。比透磁率は全ての部位で1である。Fig. 4 Overview of the experimental equipment.Fig. 5 Positions of each parts of the base of brain.Fig. 7 Numerical analysis model.

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