日本大学生産工学部 生産工学部研究報告A51-2
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─ 13 ─水素−窒素イオンビーム照射による 有機高分子膜エッチングにおける表面反応の数値シミュレーション解析山城 昌志概  要分子動力学(MD)シミュレーションによって,有機高分子膜のH2/N2あるいはH2/NH3のイオンビーム照射によるエッチングプロセスを数値的に解析し,表面構造の変化,スパッタリングイールド,及びスパッタリングによる脱離物について吟昧した。その結果,照射された窒素原子は有機膜表面に窒化炭素(CN)層を形成し,その層内での窒素と炭素の原子数比はほぼlとなることが明らかになった。このエッチングプロセスの間,CN層はさらなるイオンの入射により削られ,脱離粒子種は主に炭素と窒素で構成される分子(クラスター)であることが明らかになった。また,形成されたCN層は,低エネルギーでの水素原子入射によるさらなるエッチングを阻害することが示された。この場合,入射された水素原子は窒化水素ラジカルとして揮発する。これらのシミュレーションから得られた結果は,水素−窒素ガスプラズマによる高分子膜エッチングの実際の実験結果と矛盾せず,ある程度妥当な結論を与えていると考えられる。今回の分子動力学シミュレーションによるその主な結論として,プラズマ照射によって有機膜表面に形成されたCN層は,さらなるイオン照射によるエッチングを促進する一方で水素プラズマによるエッチングから側壁を保護する働きがあるという事が示された。キーワード:窒化,窒化炭素層,エッチング脱離物,保護層

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