日本大学生産工学部 研究報告A(理工系)第51巻第1号
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─ 3 ─な動きにする (2) 人がいる(■)と人がいない(□)だけではなく,降車階が異なり「降りたくない人」が存在するという2つの拡張を行わなければならない。拡張(1)については,1次元格子上で考えていたものを2次元格子上で,特にエレベーターの定員を考慮して,Fig.2のように4×4の16マスで考えることにする。また,前節では各マスの状態で次の時刻の状態が並行して決まっていたが,現実では出口に近い人から順に行動を起こすことから,Fig.2のようにマスに優先順位を与えて順番に次の状態を決めていくことにする。Fig.2 Processing numbers of the simulation拡張(2)については,人を「降りたい人(●)」と「降りたくない人(○)」に分けた上で,・降りたくない人(○)も降りたい人(●)の妨げになれば回避行動を起こすとして導入する。そして,人の動きに関する時間発展の規則を簡単にまとめると,降りたい人(●)と降りたくない人(○)の初期配置を与えた後,Fig.2のマスの番号順に人がいるかいないかを見ていき,人がいなければ次の番号のマスに移り,人がいれば次の規則に従い人を動かすことにする。▶降りたい人(●)1)出口方向の前,斜め前,横を順で見て,人のいないマスがあれば移動し,マークを▲に変える2)空きがなければ,その場に止まり,マークを★に変える▶降りたくない人(○)・その場に止まる▶降りたいけれど移動できない人(★)1)出口方向の前,斜め前,横を順で見て,人のいないマスがあれば移動し,マークを▲に変える2)空きがなければ,その場に止まり,マークは★のままにする▶回避したい人(☆)1)回避行動として壁方向の横,中央方向の横,前を順に見て,人のいないマスがあれば移動し,マークを△に変える2)空きがなければ,その場に止まり,マークは☆のままにする▶移動が終わった人(▲,△)・その場に止まる▶すべてのマス目で処理が終わった後1)すべてのマスの処理が終わった後,中央列(1, 2, 3, 4, 7, 8)にいる降りたくない人(○)で,真後ろと壁側後方(例えば,番号1のマスにいた場合は番号3, 9のマスが対象)に「降りたいけれど移動できない人(★)」もしくは「回避したい人(☆)」がいる場合はマークを☆に変える2)▲のマークを●に,△のマークを☆に戻す3)時刻が1つ進んだとする以上の規則に従った例をFig.3に示す。2.3.実証実験との比較前節のシミュレーションの検証を行うために,Fig.4のようにエレベーター内の空間を仮想的に再現し,協力者のもとで乗降の実証実験を行った。乗降者の条件としては,・乗員は10名とする・降りたい人が3名と7名の2通りを考える (ほとんどが降りない状況と降りる状況を再現する)を考え,効率化を考えるための条件として,Fig.5のようにエレベーター内を「前方・後方」と「中央・外側」に区分して,・降りたい人が「条件なし(ランダム)」に配置されている・降りたい人が「前方」に配置されている・降りたい人が「中央」に配置されているの場合を初期配置とした。各組合せを数値実験では100回,実証実験(降りる・降りないおよび乗車位置はクジで決定し,通常の乗り降りを再現してもらった)では10回実施した結果がFig.6である。なお,Fig.6は各結果を降車時間が小さい順にソートした結果を示しており,実証実験では試行回数が少ないので横軸x=5, 15, …, 95にプロットしている。また,縦軸は数値実験が「ステップ数」,実証実験が「秒」の単位である。結果として,Fig.6のグラフを見ると分かるように,おおよその基本的な状況は再現できていると考えられるので,本シミュレーションをもとに効率化の考察を行うことにする。2.4.シミュレーションからの考察シミュレーションの結果より,降りたい人が適当に乗るよりも,「前方」もしくは「中央」にまとまって乗る方が効率的だと分かる。
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