日本大学生産工学部 研究報告A(理工系)第51巻第1号
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─ 20 ─て,自車が一定速で走行し,相対速度がない状態で接触する場合について考える。予測される接触点を算出するために,各車両の位置の推移をFig.1に示す。なお,ここでは車両の全長は考慮していないが,実際の運転支援システム設計時には考慮するものとする。横軸の時間0sは青信号に切り替わるタイミングであり,手前側を負としている。縦軸の位置0mは交差点入口側停止線であり,時間と同様に手前側が負である。信号切り替わりタイミングは,路車間通信等を利用して取得することを想定し,青信号に切り替わるまでの時間をTTG(Time To Green: TTG>0)とする。現在の自車位置x(t)と予測される接触位置xt(t)を結ぶ線の傾きを,先行車と接触する上限速度vlim(t)として,先行車の等加速度運動と自車の等速運動から,予測される接触時間ttを求める(ttの導出過程は,末尾の付録に記載されている)。それにより,予測される接触位置xtも求まり,この位置を起点として,先行車と接触するまでの時間TTT(Time To Tangency)に現在の速度v(t)をかけあわせた減速要求距離dd(t)が求まる。dd(t)=v(t)・TTT(1)ただし,減速要求距離ddは先行車との予測接触位置xtを基準とするが,道路上に呈示する際には,入口側停止線より奥側は呈示しないものとする。前述の評価指標を道路上へ視覚的に呈示する手法の模式図をFig.2に示す。Fig.2(a)のように,自車が評価指標の領域外を走行している場合は,現在の速度を維持することで,先行車と衝突することなく,不要な減速を回避することが可能である。一方,Fig.2(b)のように,自車が領域内を走行している際は,そのままでは先行車と衝突する危険性があるため,自車の領域内への進入度合いに応じて領域を点滅させることで,ドライバに減速操作を促す。減速操作により自車が評価指標の領域外に出た場合には,それ以上の減速操作は不要となる。なお,一般的には先行車に対しては,速度に応じた車間距離(車間時間)を保って走行するが,適切な車間時間は個人差等の影響を受けるため,ここでは接触(衝突)の可能性をドライバに呈示して,先行車に対するマージンはドライバ自身が判断するものとした。3.シミュレータ実験Fig.3に示す定置型DSを用いて,前述の支援システムの検証を行う。Fig.4に,ドライバの視点から見た評価指標の呈示イメージを示す。情報呈示の開始タイミングは,自車が交差点に進入する10s前として,60km/h(16.7m/s)で走行することを想定し,交差点入口停止線から167m手前の位置から情報呈示を開始することとした。実験参加者は,走行開始後,片側一車線の直線道路を60km/hの一定速度を維持して走行するものとする。ここで,自車が現在の速度を維持した場合に,自車が交差点(入口側停止線)に進入するまでの時間をTTI(Time To Intersection)とすると,青信号へ切り替わるタイミングはTTG=TTI−2sとした。これは,先行車が存在しない場合には減速が不要であるが,先行車がいる場合は減速が必要な条件である。実験参加者は,筆者の一人であり,DSの運転の運転に習熟した20代男性である。実験結果の一例として,Fig.5に速度の推移を示す。実線が自車速,破線が先行車速で,一点鎖線が上限速度である。TTG=TTI−2sであるため,−8sが情報呈示開始タイミングである。同図より,情報呈示開始直後は,自車は上限速度よりも高い速度で走行している(呈示指標の領域内にいる)ため,現在の速度を維持すると先行車に追突する可能性がある。呈示された情報により減速の必要性を認識し,上限速度以下(領域外に出RedGreenvlim(t)v(t)TTTxttt0-TTGx0Position[m]dd(t)=v(t)・TTTv(t)Time[s]Preceding vehicleEvaluation indexOwn vehicle(Upper limit velocity)Fig.1 Predicted tangency point.dd-xt(a)Unnecessary to decelerate v(b)Necessary to decelerate vdd-xtFig.2 Schematic diagram of indicating evaluation index.

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