日本大学生産工学部 研究報告A(理工系)第51巻第1号
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─ 19 ─1.序論自動車が引き起こす環境・エネルギ問題を解決するために,信号交差点における早めのアクセルオフなど,ドライバが走行方法を工夫することで,燃費を向上させるエコドライブ1)の取り組みが行われている。都心部における自動車の走行モード別燃料消費量の割合に着目してみると,発進時が最も多く,38.2%を占めている1)。このことから,前方の信号が赤信号の際に,不要な減速を回避する支援を行うことで,不要な再発進や再加速も低減できるため,燃費の向上が期待できる。不要な減速を回避するためには,前方の信号の切り替わりタイミングの情報が必要である。そこで,路車間通信技術により前方交差点の信号情報を取得することで,車載表示器に走行支援情報を呈示する信号情報活用支援運転支援システム2)が実用化している。しかし,車載表示器へ情報を呈示する場合,速度が時々刻々と変化する状況おいて,表示器に視線を移す必要があるため,前方の道路環境への注意が逸れる可能性がある。そのため,前方交差点の通過の可能性を,位置情報として路面に仮想的に呈示することで,赤信号に切り替わる際の通過・停止の判断を支援するシステムが提案された3)。燃費に影響を及ぼす,青信号に切り替わる場面でも同様に,減速判断に必要な情報を道路上へ呈示することで,燃費が改善することが確認された4)。この支援システムは,青信号になるまでの時間と現在の自車速から,減速が必要な領域を道路上に仮想的に呈示して,ドライバに減速判断を知らせるものである。前方に信号待ちをしている車両(以下,先行車とする)が存在しない場合には,呈示される情報により減速判断が可能になる。しかし,先行車が存在する場合には,呈示される情報に従うと,先行車の影響により,必ずしも不要な減速を回避できるとは言えない。そこで本研究では,青信号切り替わり後に先行車が等加速度運動を行うという仮定のもと,不要な減速を回避する支援システムを提案し,ドライビングシミュレータ(以下,DSとする)実験により支援システムの検証を行う。2.不要減速回避支援システムの評価指標青信号切り替わり後に等加速度運動する先行車に対し資 料日本大学生産工学部研究報告A2018年 6 月 第 51 巻 第 1 号信号交差点における停止車両を考慮した不要減速回避支援システム丸茂喜高*,中西智浩**,山﨑光貴***,鈴木宏典****Assistance System to Prevent Unnecessary Deceleration Considering Stopped Vehicle at Signalized IntersectionYoshitaka MARUMO*, Tomohiro NAKANISHI**, Koki YAMAZAKI*** and Hironori SUZUKI****Keywords:Driver Assistance Systems, Energy Saving Driving, Signalized Intersection, Human Interface, Augmented Reality *日本大学生産工学部機械工学科准教授 **日本大学大学院生産工学研究科機械工学専攻博士前期課程2年 ***日本大学大学院生産工学研究科機械工学専攻博士前期課程1年****日本工業大学先進工学部ロボティクス学科教授
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