日本大学生産工学部 研究報告A(理工系)第51巻第1号
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─ 16 ─ため,再度厚み測定を行った。測定した全原子核乾板の厚みをFig.13に示す。全体の厚みは70±3μmとなり,原子核乾板を目標の厚みまで膨らませることに成功した。また,Fig.14は膨潤後,原子核乾板が乾燥するまでのおんどとり上のグラフの一例である。横軸は時間,青線は湿度,橙線は温度を表している。除湿機稼働後の湿度は徐々に低下し,湿度43%程度で湿度の低下は見られなくなり,原子核乾板乾燥後も湿度43%程度の状態を維持していた。この温湿度管理システムにより,部屋の外部から,室内の湿度変化をモニターできるようになり,部屋にいなくとも原子核乾板の乾燥状態がわかるようになった。このように,温湿度監視システムは,膨潤作業後の乾板の乾燥状態を把握する上で,非常に効率的であった。6 結論日本大学生産工学部にて原子核乾板の現像処理が可能な環境を作り上げた。環境整備後の暗室にて,合計300枚以上の原子核乾板に対し現像,膨潤を行うことができた。現像作業,膨潤作業共に問題なく終了し,現在そのデータ解析作業が行われている。今後も原子核乾板を用いた素粒子実験は国内外を問わず継続的に行われていく。今回のこの現像室を含む統合的環境により,日本大学生産工学部が今後も継続的に最先端の素粒子実験に貢献していくことが可能となった意義は大きい。謝辞現像室の整備作業および現像作業には,東邦大学の森元祐介氏,松尾友和氏,そして福田努氏(現在は名古屋大学)に多大なご協力を頂いた。日本大学生産工学部 教養・基礎科学系の阿部治教授には現像室を素粒子実験で使用することを快諾して頂き,同系化学系列の山川一三男准教授,三木久美子准教授には現像液の廃液処理にご協力頂いた。ここに記して御礼申し上げます。参考文献1)C. F. Powell, P. H. Fowler, and D. H. Perkins,“The Study of Elementary Particles by the Photographic Method.” Pergamon Press, New York, 1959.2)丹羽公雄「放射線計測における写真乾板」,日本写真学会誌,67,561(2004).3)桑原謙一,西山伸吾,「新規原子核感材の開発─オペラ実験に使用するニュートリノ検出用原子核感材─:オペラ実験に使用するニュートリノ検出用原子核感材」,日本写真学会誌,67,521 (2004).4)久下謙一,「光と放射線による銀塩写真の感光の原理」日本写真学会誌,79,65(2016).5)中野 敏行,森島 邦博,「原子核乾板の飛跡読み取りの現状」,日本写真学会誌,71,229 (2008).6)中野敏行,吉本雅弘,駒谷良輔,「最新の原子核乾板飛跡読み取り技術」,日本写真学会誌,79,54 (2016).7)T&D,「クラウドに自動送信」TR-7wfシリーズ導入ガイド 第2版,(2014) p28)T. Fukuda, S. Mikado et al.,: First neutrino event detection with nuclear emulsion at J-PARC neutrino beamline, Prog. Theor. Exp. Phys. 2017, 063C02, 23 pages9)K. Yamada, S. Mikado et al.,: First demonstration of an emulsion multi-stage shifter for accelerator neutrino experiments in J-PARC T60 Prog. Theor. Exp. Phys. 2017, 063H02, 17 pages(H 30.2.10受理)Fig.14 Temperature and humidity during drying of nuclear emulsion plates.

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